香港老婆餅指南
夜が明けて過ごしやすい11月の香港の朝がやってきた。
今日はついに私の愛する老婆餅たちがNo.1の座をかけて戦う日。
尚、本編を読む前に、下記のプロローグを参考されたい。
しかし、こんだけいろんなところに行って、手のかかることをしている
というのにどの企業からも一銭ももらっていない、完全自腹企画というのが
我ながら暇人だなと思う。(しかも、昨日は休日出勤してたのに)
ま、それはいいや。やるなら、とことんやろうじゃないか。
それが香港ライフファイル流なのさ。
庶民の味方。意外なダークホースになり得るか? – 泰昌餅家
まずはパッケージから。
・・・。
これはもうしょうがない。泰昌餅家さんは老婆餅屋さんではないのだ。
化粧箱なんて期待するほうが間違っている。
それに、実を言うと、そもそも私も選考に入れるつもりはなかった。
ただ、帰り道に寄ってみたら売ってたから買っただけ、という経緯も。
で、これが袋の中身。
ごく普通の大きさで、取り立ててコメントもないスタンダードなルックス。
断面図はこの通り。
老婆餅の特徴である冬瓜餡のペーストにゴマがミックス。
こうして見てみると意外に美味しそうに見えてきたかもね?
さて、実食。
あら、結構美味しいかもしれない。
今回この老婆餅No.1選手権にアマチュアとして飛び入り参加してきた割には
しっかりと整った味をしているし、それでいってきちんと老婆餅風味。
控えめな甘さで、ゴマの香りも好印象。きちんと合格点はクリアして来ている。
ちなみに、この老婆餅。値段の方も一番安価で、ひとつ5.5香港ドル。
惜しむらくはおみやげに持って行けるような佇まいをしていないということ。
よって、朝ごはん用に買って、オフィスで食する域を出ないし、
国境を跨ぐことは現状考えられない。無念である。
私と泰昌餅家とはそういう運命にあるのだ。
しかしながら、非常にニュートラルな味で、気軽に買うことできるのは◯。
泰昌餅家 – 事前予想 : ★★★★★☆☆☆☆☆ (5/10)
一個 5.5香港ドル
味 : ★★★★★☆☆☆☆☆(5/10)
お土産適正 : ★☆☆☆☆☆☆☆☆☆(1/10)
老舗の餅家に挑戦。手頃なお土産屋からの下克上を狙う – 奇華餅家
まずはパッケージ。
箱買いも出来るし、バラ売りも可。
ひとつずつ袋に入っているから、おみやげ用にも配りやすい。
こちらはFacebook上でお借りしたお写真。
パッケージだけでも買う価値がある、素敵デザインだ。
他の老婆餅とまったく一線を画するのがふんだんに使用されている胡麻。
これが吉と出るか、凶と出るか。
胡麻はしっかり中にも入っていた。ここまで来ると別の食べ物のように見える。
さて、実食。
やはり食べた瞬間に胡麻の香りが口いっぱいに広がる。
が、それは決して強すぎない。思ったよりも抵抗なく受け入れられるもの。
それから、生地はどちらかというとしっとりタイプ。
食べる時にパサパサしたり、ポロポロとしたに落ちてしまうパイ生地が
あまり好きでない私はなかなか好みな食感と言える。
そして、それに挟まれるペーストは驚くくらいに大人しいトーン。
主張と言える主張をほとんどしてこないし、控えめな味に徹している。
これは、老婆餅特有のクセがちょっと苦手という人への配慮かもしれない。
奇華の老婆餅。胡麻の香ばしい香り、主張しない冬瓜餡。
これによって随分食べやすく、万人受けするものに仕上がっている。
ある意味、それは各所で観光客向けに多売を展開する奇華のビジネスに
合致しているし、マーケティング側もそれを狙っているはず。
これこそ老婆餅!というにはためらいも生じるが、はじめの一個として
手に取るには一番無難な老婆餅。事前予想の低さも良い意味で裏切られ、
おみやげ屋大手としての奇華の徹底ぶりにも驚きが感じられた。
奇華餅家 – 事前予想 : ★★★★☆☆☆☆☆☆ (4/10)
一個 8香港ドル
味 : ★★★★★★★☆☆☆(7/10)
お土産適正 : ★★★★★★★☆☆☆(7/10)
横綱相撲を見せるか、元朗の老舗 – 榮華餅家
パッケージからして中国の伝統的なデザインで高級感も漂う。
おみやげとしてもらう方もこれなら(中国でも)安心と思うかもしれない。
また、榮華餅家では店舗でひとつずつ温めたものをバラ売りもしている。
ちなみに化粧箱には、なぜ老婆餅と呼ばれることになったかの由来も。
要約すると、
昔々、あるところに病気の義理のお父さんのために自分を
身売りしてお薬を買うように申し出た献身的な女性がおったそうな。
その女性の夫は、自分の妻が取り戻すべく手段を必死に考えた挙句、
お菓子を作って売ることに決定。
それが美味しいと評判でバカ売れ。見事、奥様は旦那様のもとに。
以後、幸せに暮らしました、と。ふーん。
そんな美談も作られているようだ。(まったく信じてない。)
※ 「老婆」は中国語で「奥さん」の意。
外観。かなり大きめで、しっとりとした様子。
切った瞬間に老婆餅の香りが広がる。
厚みはそこそこだけど、中には餡がギッシリ。
では、老舗の味はいかに。
私が最初に食べた老婆餅であり、今でもそのファンでいられるのは
間違いなくこの榮華餅家のおかげ。
その信頼を裏切らない、伝統的な老婆餅の味と言える。
明らかに他の老婆餅と比べると、香り・味ともに濃厚で、
それでいて上品でもある味はまさに老舗餅家のみが出来るお家芸だろう。
そのコクの強い味はお茶と合わせてぜひ楽しみたい。
一番老婆餅らしい老婆餅と言えるだろう王道の味なので、
好きな人はとことんハマるし、老婆餅らしいクセが苦手なひとは
逆に奇華あたりを買うのがベター。クドイっちゃクドイ味だ。
榮華餅家 – 事前予想 : ★★★★★★★★☆☆ (8/10)
六個入り 50香港ドル
味 : ★★★★★★★★★☆(9/10)
お土産適正 : ★★★★★★★★☆☆(8/10)
日本での知名度は劣るもローカル民からは絶大な支持 – 恆香老餅家
真っ赤に金色の文字のパッケージがいかにも中国らしい。元朗、恆香老餅家。
オリジナル、ココナッツ、そしてパイナップル。
期待の餅家だけに数種類の味を購入してみた。
まずはオリジナル。
他の老婆餅に比べると、自宅で作ったような素朴さが目を引く。
お世辞にもスマートな見た目とは言えず、ぼってりとした外観。
中にはギッシリ餡が詰まっている。
香港人のほとんどが最高の賛辞を送るその老婆餅。
トリにこいつを持ってきたのも私の高い期待が伺えるだろう。早速、その
最上の老婆餅とやらを食してめでたくエンディングと行こうじゃないか。
で、パクリ。
「ん?あれ?」
さらに、パクリ。
・・・?
なんだろう。ものすごい多くの香港人を敵に回しそうだけど、
そんな言うほど美味しいかな。まったく不味くもないのだけど。
見た目の通り、味も素朴で榮華餅家のようなコッテリとした主張はない。
私が今、ある種のガックリ感?を味わっているのは、きっといくつか
理由があるのだと思うけど、考えつくのは下記の通り。
- 一番最後に回した分、ちょっとお腹がいっぱいになってきている。
- 買った次の日に食べるのでなく、元朗の街歩きをしながら
あつあつを食べる、っていうのが理想だろ。 - 恆香老餅家はラム。榮華餅家はマトン説。羊肉の臭みを目当てに
食べてる人と、それを良しとしない人。老婆餅も同じように
ガツンと来るクセを楽しむ榮華餅家派とさっぱり恆香老餅家派が。 - 私はポロポロ落ちる系の生地がそもそも苦手。
とか書きながら、何度も食べて来てたらジワリと美味しさが
増してきたかもしれない。素朴な味だけに飽きが来ないよね。
こういう派手さの無い味の方がローカルにはいいのかもしれない。
榮華餅家なんて、クドすぎて絶対毎日なんか食べられないし。
あ、そうそう。
私は他の味も買ってたんだった。
こちらは老婆餅界のアルビノ、ココナッツ味。
うーむ。榮華餅家もそうだけど、いろんなフレイバーを出すのは
いいのだけど、やっぱり戻るところはみな原味だと思うな。
・・・そういう味。(笑)
ココナッツ狂じゃなきゃ、特にお金を出して買う価値もないかと。
パイナップル味。
買う時からすでに爆死することを予感させられる味だったが・・・。
「これ買うんだったら、素直に台湾行って鳳梨酥(パイナップルケーキ)でも
買ってこいや。」的なツッコミを待ってたかのような予想通りの味がした。
もはや老婆餅でも何でもない、この物体は。
恆香老餅家 – 事前予想 : ★★★★★★★★★★ (10/10)
オリジナル 一個 7香港ドル
ココナッツ、パイナップル 一個 5.5香港ドル
味(オリジナル) : ★★★★★★★★☆☆(8/10)
味(ココナッツ) : ★★★★☆☆☆☆☆☆(4/10)
味(パイナップル) : ★★☆☆☆☆☆☆☆☆(2/10)
お土産適正 : ★★★★☆☆☆☆☆☆(4/10) 個装じゃないからねぇ
さぁさぁ、老婆餅を買って帰る気にはなったかな?
こんなにたくさんの老婆餅を食べ比べてみたのは生まれて初めてだし、
今後も絶対ないだろうってくらいに堪能してやった。ビバ、老婆餅!
エッグタルトを買うついでに老婆餅もどう?な泰昌餅家。
外れを作らない万人受け仕様の老婆餅で安定の奇華餅家。
これぞTHE老婆餅とも言える王道の余裕、榮華餅家。
そして飽きの来ない素朴な味でローカルに愛される恆香老餅家。
味だけで言うならやはり、榮華餅家か恆香老餅家。(原味に限る!)
この二強は間違いないと思うし、どちらが良いかは好みの問題かな。
まぁ、ある意味、順当な結果だよね。
それから、お土産のオススメなら榮華か奇華。(私は絶対榮華派)
シンプルな味の恆香も良いけれど、個装されていないので荷物の中で
エライことになって苦情のメールを受けとりたくないからやめておく。
一番良いのは香港に来て、元朗まで遠征。
そこで街歩きをしながら、片手に恆香、もうひとつの手には榮華を持ち、
あつあつを頬張るという至福の老婆餅ツアーが出来ればいうことはない。
(そこまでやっちゃうと、私以上の老婆餅マニアだけど)
あ、最後に全然関係ないけど
私が忙しく写真撮ったり、食ったり、記事書いてたりしてたときも
ずっと美味しそうな匂いに悶々としてた我が家のワンコ。
お詫びに後でオヤツでもあげとかなきゃねぇ。
ではでは、皆様、素敵な老婆餅ライフを!
食べてみての感想もお待ちしております。
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