私はやっぱり日本人だなと思った日
やっと週末。大変に忙しい一週間であった。
通常、夏休みシーズンは穏やかな業界なはずなのだが、
どうも今年はそれも例外のようで、今月中はしばらく多忙の予定。
サイトの更新も少々滞りそうである。
こうも忙しいと当たり前のようにストレスが溜まるものであるが、
これはもう社畜であり、打工仔である私の宿命のようなものであり、
それとどう付き合っていくかが社会人としての腕の見せ所であろう。
しかし、残念なことに私というヤツは日々ストレスを発散して
バランスの良い生活を送れるような器用な都会人タイプでなく、
どちらかと言うと貯めこんでしまって一人悶々としてしまうタイプである。
そんな私のような人間でも、少々のお金と時間があれば、
一気にリフレッシュする手段がこの世の中にはご丁寧に
用意されているのであり、それを人は「旅行」と呼ぶ。
これがあるがために我々は日々のモチベーションを維持できるのであり、
私の住む香港に至っては地理的な条件もあいまって、
道行く人に趣味を問うてみれば、ほぼ90%以上の確率で
「旅行」と答えるという、もはや香港市民にとって無くてはならない
国民的行事という地位を確立した存在である。
Twitterでは少しつぶやいたが、私は9月に一時帰国する。
それが当面の私のモチベーションを繋ぐ命綱なのである。
実はただの一時帰国ではない
今回の一時帰国はただの帰国ではない。
成田でも羽田でも大阪でなく、わざわざ福岡から入って、
少し早めに日本を出て、帰りには台湾に寄る。
いつもと違う都市から入って、海外永住ビザ所持者の特権、
JRレールパスを使い、寄り道しながら帰省するのも良い。
日本を旅行するなんて海外居住者にとってはなかなか
機会もないし、ぶらりと風まかせに途中下車できるのは魅力。
しかし、なんといっても私にとっては因縁とも言える、
台北に捲土重来して、多くの香港人たちが理想と口をそろえる、
中華文化を堪能することを私にとっての念願である。
要するにいつも香港から実家へと直行するのが基本な
私の一時帰国パターンとは大きく趣を変えてみて、
気分転換の比重を上げてみた私になりに考えたプラン。
だからこそ、楽しみもいつもの何倍だったのである。
・・・だったのである
どうしてここにきて急に過去形になったのであろうか。
そう、悪夢の電話は今週終盤になってやって来た。
ボス「来月、日本行きましょうか。」
私「はい、いいですよ。」
ボス「そうですね、できれば前半が良いのですが。」
私「あ、しかし、中秋節は有給をいただいています。」
ボス「あら、そうでしたね。旅行ですか?」
私「えぇ、ちょっと息抜きをしに行こうかと。」
ボス「良いですね。日本ですか?」
私「はい、帰省みたいなもんです。」
ボス「あ、では、そのまま日本にいてください。ホテルとっときます。」
私「あ、え?はい。・・・!?」
ガチャ。
香港ライフファイルでは遠慮なしに物を言っている私であるが、
こういう肝心なところでは嫌と言えない出来ないヤツである。
かくして、私の素敵一時帰国プランは水の泡へと消えた。
悲しみにくれているというのに
それからというもの、私は大きく落ち込んでしまった。
絶賛社畜キャンペーン開催中だった私にとって、福岡ー台湾の
黄金プランはまさに一途の光であったわけだから当然である。
今日だって、毎週金曜恒例の同僚とのランチもキャンセルして、
ひとりでガックリタイムを噛み締めていたい気分だった。
だから、内線でランチ出発の誘いが来た時も仕事が忙しいからと
断ったのに、香港人に無理やり連行されてしまった。
ランチ中も、落ち込んでいる私に「そっとしておくことをしらない」
香港人たちが根掘り葉掘り聞いてくるから、私も残る元気を
振り絞って話すわけだが、それからが本当の受難であることを
その時の私は知る由もなかったのである。
結論から言うと、盛大なお説教ランチになってしまったのだ。
香港人節が炸裂するテーブル
まず、彼らの言うには既に旅行を決めてしまっているのだから、
それはハッキリ言って、自分の計画を優先させるべきということ。
いかにも香港人らしい意見である。
彼らにとっては、自分の生活や幸せが常に人生の中心にあり、
それは会社が相手であっても、揺るぐことがない。
生まれた時から社畜DNAが生まれこまれている私の
会社やボスへの過度の遠慮やロイヤリティなんてものは
彼らにとっては屁のようなものである。
自分を会社のために無条件に犠牲にするという事自体が
馬鹿らしいし、会社と対等にものごとを考えるのが基本であるから、
その点、私はまだまだ日本人マインドが残っているのだろう。
同じ多忙でストレスフルな生活を送る日本人と香港人。
究極の違いはまさにここである。
最後の最後で崩壊する人が少なくない日本人に対して、
日々のストレスの発散、そしてどこかで楽観的で自分思いの
決断をできる香港人が圧倒的に逞しくいられるのは。
やはり行き着く先はあれである
そんなことを考えつつも、当たり前のことを言われて
さらにダウンする私に追い打ちをかけるように彼らは続ける。
トークに火がつきすぎて、私の目の前の鶏扒飯は既に冷たくなっている。
たとえば、のんびりしていて全然とっていなかったホテルは
いいとして、既に購入済みの航空券たち。
当然キャンセル料が発生するのだが、もちろん会社に請求するだろ。
と、問い詰めてくるのである。
結局、別の航空券をただで用意してくれるわけだから、まいっか。
程度に考えていた私は甘すぎるということで全員一致で一刀両断。
これまた、さすが金のことになると一文たりとも妥協しない
香港人らしい着眼点であり、彼らにとっては呼吸をするよりも
自然に出てくる思考論理なのであろう。
他にも、出張中のアローワンス体系はどうなっているのか、
何が請求できて、何ができないのか詳しく尋問された上に
どうやったら会社から搾取することができるかのノウハウを
プライベートレッスン形式で伝授されたのである。
まったく、身内にいるととんでもなく頼もしい人たちであるが、
つくづく敵じゃなくて良かったと思ってしまう、
厳しく、そして逞しい人たちなのであった。
そんなランチも終わり・・・
何だかんだで話をしてみれば、多少はスッキリするものである。
彼らから授かった「香港人の知恵」(会社からカツアゲする方法)も
私的にアリと思われるものは粛々と実行していくつもりである。
ところで、今日のランチメンバーのうちのひとりは、
私の幻の台湾旅行に途中から合流しようと企んでいた、
外国にまで着いてきちゃうとっても人懐っこいヤツ。
私が思うに彼は香港人の中でも特に「幾多錢呀?」の
頻度が高い人で、私が買い物するといつも「咁貴?」(そんな高いの?)を、
連発してくる、お金に厳しい香港人の代表格的存在である。
人としては大変に優しく、私も大好きなのであるが、
一緒に旅行に行くというのはどうなることかと実は不安も少しあった。
というのも、私のポリシーとして、旅行に行った時くらいは(え、いつも?)
少々遊びたいものだし、金の使い方も若干ルーズになってしまうもの。
それこそが旅行マジックであり、醍醐味みたいなものだと私は考えている。
であるのに、横にいる人が私の買うものや、浪費っぷりに道すがら
ブツブツ小言をいうような罰ゲームに私が耐えられるのだろうか、
という疑問が頭の中にはあったのである。
彼の性分的に、スタバのような雰囲気料を払っているような感覚が
嫌で嫌でしょうがないのだろうし、そういう意味では彼の眼には
私のバカ面丸出しで地に足つかない旅行中の意味のない金の使いっぷりは
当然我慢ならないし、理解の出来ない奇行に映ってしまうことだろう。
あいにく、今回はオシャカになってしまったが、次回また彼らと
旅行に行くようなことがあれば、それについてここでリポートしたいと思う。
あれだけ他の国より高い価格水準だというのに、香港ではスタバが
大繁盛しているから、意外に出すところには出す、という
不思議な財務大臣が彼らの頭の中には存在しているのかもしれないし。
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