気軽な香港旅行
お前のサイトもそうだろ、と言われてしまうと弁解の余地がまったく無いのだけれど、
いわゆる香港情報と謳う媒体と接したとき、そのほとんどの場合に思うことが
「またそれ?」「似たようなもの、見たことあるけど」的な感想なのである。
それはきっと私がもう香港10年目に突入してしまったこともあるのだろうし、
そもそも香港という都市自体が地理的にも日本人にとって身近でアクセスしやすく、
かつその魅力の虜になってしまいやすい親和性の高い街であること、
それ故に在住者やファンも多く、情報が飽和しているという背景も関係している。
というのが私の一応のところの簡単な分析だ。
香港迷ー。
この街に住み、厚かましくもブログまで書くようになってから
接することの多くなった日本人の方々は主にこのカテゴリの人たちである。
香港に対する思い入れが人並み外れて強く、実家の敷居をまたぐ数より、
香港入国スタンプの方が多いという生態が普通に観察されるほどで
もちろん私なんかよりよほど熱心に香港のことを勉強している層でもある。
そういう三度の飯より香港のことが好きな人たちの情熱とインパクトが故に
彼らこそが日本人観光客におけるマジョリティであると私は考えるようになっていた。
が、あらためて空の玄関である空港や、市内各所の観光スポットを
眺めていると現実に立ち戻るのである。
卒業旅行で香港寄ってみました、な大学生。
職場の社員旅行で「香港?何それ美味しいの?」状態で着いてきてるだけのおじさん。
最近、うちの近くの空港からも香港にも飛ぶようになったんだけど、
北海道行くより安いし来てみました、な地方からのお客様。
むしろ、こういう人たちの方が数としては圧倒的に多いわけで、
そういう人たちは香港に対してあらかじめ特別な感情を持っているわけでもないし、
実際に旅行をしてみても夜景と飲茶の他に特段心に刺さるものもなく時間を過ごした後、
楽しかったけれど一回行けばもう十分かな、という想い出とともに香港との関係を終了させる。
そういう視点に立ち返ってみると、あんまりマニアックな情報よりも
メジャーな観光スポットを3泊4日で大体網羅できるような定番情報こそが
やっぱり王道として繰り返し発信されるべきなのかしら、という結論がぼんやり見えてくる。
ちなみに、私は今帰省中なのだが、今回のフライトは↓であったのだが
岡山なんて誰も乗らないだろうし、間もなく路線も打ち切りなのではという不安とは裏腹に
香港では連休中である上に桜も満開、ということで機内はほぼ全員香港人で満席状態。
尚、香港航空は来月から鳥取の米子鬼太郎空港(鳥取県下のもうひとつの空港は
鳥取砂丘コナン空港・・・。鳥取県の潔さに乾杯。)にも定期便を飛ばすそうだ。
ふむ、なるほど。
東京・大阪には飽きるくらい通い詰めている + アニメ大好きという属性を持つ
香港人を狙っていることには若干のロマンと鳥取の死に物狂いの街興し精神を感じるものの、
じゃあ日本からはどんな人たちがこの定期便に乗り込んでいるのだろうか。
鳥取県の人たちにはぜひ誤解なきよう読んでいただきたいのだが・・・、
例えばうちの実家の近くで香港行きの旅行ツアーを組んだとしたら。
65歳以上が半分を占めるようなシニアな年齢層な上に海外旅行もほとんどが初めて。
きっとみんな普段着慣れない一張羅に身を包んで、中国大陸からの団体旅行客と
並んでもあんまり違和感のない垢抜けない団体が出来上がっちゃうはずである。
(繰り返すけど、きっと同じ鳥取でも都市部は違うはずだと信じてる・・・)
そして、そんな人たちが静まり返った夜更けにインターネットで情報を集めるのである。
「いろいろあるけど、やっぱり香港は美食の街、とな。」
しかし、残念ながらおそらく彼らにとっては鳥取の方がよほど美食かもしれない。
そこらの茶餐廳だって都内のオシャレなランチ並の代金を請求している昨今、
「安い割には」という前提条件がついてしまうB級グルメなんて
そうそう巡り会えるものでもないし、金を出すならぶっちゃけ日本の方が旨いものは多い。
ついでにいうと、日本の地方都市にはとくに美味しいものが多いけれど、
鳥取県もご多分に漏れずあらゆる「地のもの」に恵まれていて、
私が普段、えらいお金を出してまで買い求めているアラ(しかも捕れたて)が
タダで放出されているほどに凄まじいところである。
そんな場所から来たおじいちゃんたちに「ほ、香港の新鮮なシーフードを・・・」
なんてなかなか言えたもんではない。
だとすると、この人たちにとって一番楽しく見える香港の風景とは一体何なのであろうか。
といった、複雑な考え事をしながら、このど田舎にある実家で悶々としている。
ともあれ、日本と香港との距離はどんどん縮まってきてきて
それに伴って今まであんまり香港に興味を持たなかった新しい層の人たちが
地元の空港から気軽にやってくるようになってきていること自体は何だか嬉しいのである。
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