香港人に不評な私の妙な日本人らしさ
この街にやって来てから早10年近く。
めでたく私の香港IDカードも★が3つ輝く永久性居民のものとなった。
であるから、この街のことであれば私は何でも答えることができるし、
香港人とのコミュニケーションも毎日すこぶる順調である。
・・・なんて言ってみたいものだけれど、実際にはそういう理想と
少なからず乖離した生活を送っているのが現実というもの。
こちらの文化にすっかり馴染んだように見えても、
私は良くも悪くも日本人であり続け、もっと言うとあんまり世渡りも
上手くない方のそれだから、周りの人たちを何かと困惑させてきているのである。
今回はそれを私の会社でのアシスタント(便宜上ジェシカちゃんと呼びましょう)
をはじめとする会社の人間との間で発生する、取るに足らない問題たちを
サンプルとして書いてみたい。
ちなみに私37歳、日本人。ジェシカちゃん23歳、香港人。
少なくとも表面上は仲が良いとされている二人である。
まー、まー、そんな怒らないでよ。
これはジェシカちゃんに限らず、香港人に対して私が未だによく口にしてしまう言葉である。
今までに数えきれない程のこの街の住民に会ってきたのだけれど、
やはりどうにもこうにもそういう風に見えてしまうから不思議である。
基本的にジェシカちゃんと私は仕事をするために毎日出会う関係であり、
それほど上昇志向が強いようにも見えない彼女にとっては
仕事が増えること自体は基本的にあまり歓迎すべきことではないのだろう。
そういう意味において、お仕事をお願いする立場の私は
短期的に嫌悪感を与えやすい立ち位置にあるわけだけど、
それを抜きにしてみても何気ない会話をしている最中のちょっとした言葉尻や語気に
「あら、何か機嫌悪くしちゃったのかしら」と思うような瞬間が毎日のように発生する。
ただ、本人の返答を観察してみると、たしかに「あー、面倒くさ」くらいの
軽度の負の感情はあったりするけれど、怒りなんてほど遠いというのが実情のようである。
相手が上司であろうと誰だろうと、嫌な時は嫌な顔をする。
(というか、大体のケースで私と関係ない問題で不機嫌になってるぽい)
それが生物としてごく自然な反応であるのだ。
むしろ、私のように過敏に反応する日本人の方が「面倒くさ」いというのがジェシカちゃん談。
普段、彼女とずっとタメ口で会話していても何にも気にならない私だけれど
たまに衝動的に「丁寧さ」を求める瞬間があるらしい。
マジで「面倒くさ」い人間である。
「ありがとう」くらい言ったら?
いつかのツイッターでどこぞのリサーチが
「男性にもPMSがあるらしい」みたいなことを書いていて
笑止千万、とか思いつつ読み流していたけれど、自分の中で最近にわかに信憑性を帯びてきた。
ソースは私自身である。
(まぁ、不機嫌な理由のちょうどよい言い訳にしているだけなんだろうけどね)
私は以前に「香港人は謝らない」といったような趣旨の記事を書いたことが
あるくらいだから、そういうことに普段は慣れっこになっているつもりだったのだけど
仕事が忙しかったからなのか、やっぱりPMSなのか、
ついつい口に出してしまったのが先日のことである。
まぁ、当然ながらそれを言ったからといって、気まずくなることはあっても
改善することなんて全く無かったわけだけれど、
この「お礼を言わない」現象は仲が良くなればなるほど顕著、
という意味において私にとっては相当にトリッキーな存在である。
社内時差
業務に支障が出ていなければちょっとした遅刻は問題ないダロウ?遅れた分より定時過ぎでも残っているダロウし。日本はスタート時間に厳しいのにエンド時間にルースのは #WHYJAPANESEPEOPLE やわ
— 厚切りジェイソン@書籍発売 (@atsugirijason) 2016年2月24日
厚切りジェイソン氏が日本人の既成観念を見事に論破した、と言われるツイート。
確かにルールだから守らなきゃダメというルールに雁字搦めになっている
日本企業における暗黙の了解を外国人の言葉で痛快に言い当てている。
そもそも会社に対するロイヤリティありきの思考だから外国人にとっては理解不能だ。
しかし、結局ある程度の時間を決めておかないとやっぱり不公平感はでちゃうよね?
っていう点の他に私の中で何だかモヤモヤした気持ちがあったのも確か。
じゃあ、香港人みたいに堂々と遅刻するけどキッカリ定時に退社する輩は….?
— コンソリーニ 恵 (@Meg_Consolini) 2016年2月25日
そこで目に入ってきたのがこれである。
うちの会社もまったく同じことが毎日発生するカオス状態となっているのだ。
定時に帰ることが許されている状況下では厚切りジェイソン氏の持論も
あまり大きな声で正当性を主張できなくなってしまう。
ましてや経営者でもある恵さんから見るならば、従業員の拘束時間に対して
ペイしているわけだから規定時間未満の出社であれば契約不履行であるし、
私も大体同じようなことを考えながら悶々とした日々を過ごしてきたわけである。
どうやら香港では(しかもプロダクション系の会社だと尚更ね・・・)
こういうスタイルが割と普通に存在するらしく、それらは一日の終わりに言われたことが
出来てればあとはどーでもいいでしょ?的スタイルのもと運営されている。
ただ、意外なことに私がまったく仕事をしないことにしているランチタイムなんかも
ふと彼らを見ると仕事をガツガツやってたりすることもあるので
そういう意味ではいまいち香港人たちのやる気のツボが分からないままに時は過ぎている。
きっとこの街の人は自分の感情に正直だし、自由にやれないとへそを曲げちゃう人たちなのである。
そんな経験に基づいた超放任主義のもと、明日もなんだかんだでプロジェクトはまわっていくし、
それはそれで大きな問題もなく一日は終わる仕組みになっている。
私のような日本人がいちいち口出しすることも、ましてや雁字搦めのルールなんて
この街には必要ないのである。
この記事へのコメントはありません。