帰りたいのか。帰りたくないのか。それとも、帰れないのか。

LINEメッセージ「HKLFさん、ほんとに行っちゃうの?T_____T」

今年後半に採用した日本語を巧みに操る香港女子。
まだ大学を出たばかりの経験もへったくれもない新人さんではあるけれど、
上司である私に対しても物怖じせずに何でも話してくる上に好き嫌いもハッキリしているから
一般的に言ってあんまり扱いが簡単な方のスタッフではないのだと思う。

ただ、裏表がなくてサバサバしてる分、信用できるスタッフとして私はとても好感を持っているし
何だか向こうも同じことを思っていてくれてることも仕事の節々から感じられるから、
我々は日々何事も包み隠さず話し合いながら仕事を進めるようにしている。
(仕事に関係ないお喋りがほとんどという事実をすごく肯定的に言ってみた)

そんな彼女とのパーティションを挟んだ会話。

「ねぇ、俺はこの通り随分オッサンになってしまったけど、これからMasterとか今更すぎかな?」
「いえ、香港ではみんな向上心が強いし、オッサン、オバサンの学生も多いですよ。」
「そっか、じゃあ、俺も来年辺り行ってみようかしら。」

その夜にやってきたのが冒頭のメッセージである。
(うちの会社の場合、Master受講=退社の選択の可能性が高い)

日本に帰りたいのか。帰りたくないのか。それとも、帰れないのか。

何だかそんな風な海外在住日本人向けの問いかけを最近ツイッターで見かけたような気がする。

私自身は危機感が薄すぎるためか、あんまりそういうことを考えたこともなかったけれど
「香港にもうちょっとだけ住んでみたい。」という、ゴールというよりも漠然と呼んだほうが
ふさわしい想いのもと、住み慣れてしまったこの街で緩く過ごしてきている。
故に、おおまかに言って「帰りたくない」に分類されるのではないだろうか、と私は思う。

ただ、それは学生として香港生活をスタート → なんとなくそのままこの街にいつく
→それなりにやりがいと楽しさ、安定を保証してくれる仕事に偶然ありつく。
という、ラッキーすぎる生活を送ってきた私の勝手な主観であり、
もしかしたら周りの人はすでに「あの人、帰りたくても帰れないのね、可哀想。」的な
哀れみの混じった目で見ていてもまったく不思議ではないであろう。
事実、最近それとなく「歳を重ねてからの帰国はかなり難度が高いらしい」といった具合の
世間話に見せかけたご指摘をいただく回数も増えてきた。

そういうわけで、私もようやく、帰国の可能性を模索することを始めたのだ。
それが例えば、どこかアクセプトしてくれる場所があるなら、少し形になるものを学んで
「香港でやり遂げた何か」を少しずつ具現化していこうと思っているというわけである。
(それは日本でも胸を張って言えるものになるだろうし、何よりオフィスでも最近、
Master程度はほぼ当たり前に持ってるからねぇ・・・。)

そして、それを実行に移すにあたっては当然ながらTOEFLなりIELTSなりの
英語力の証明がいるわけで、今までそういう資格云々も見て見ぬふりしてきた自分に対する
強制力としては良い具合に働くのではという楽観的な見通しをしているのである。

ちなみに、ちょっと昔の私だったなら、上記のような帰国の可否を案ずる声にも
あまり興味を示さずだったはず。にも関わらず、近年は割と真面目に受け止めている。
それはもしかしたら、きっと近年の雨傘革命の影響が大きいのかもしれない。
大袈裟かもしれないけれど、あの出来事を境にして私の中での香港の見方というか
住み心地が変わったような気がするから。

・・・と、真面目なことを書いてしまったけれど、結局のところは
「帰国してもちゃんと生活できるためのリスクマネジメントをする」だけであって
やっぱり「もう少し香港に住んでみたい」という想いも強く心のなかに存在する。

私は生まれた時から転勤族の家庭に育ったから、ひとつの都市にこれだけ長く住むのは
おそらく初めて。それだけにこの土地への思い入れも強くて、間違いなく第二の故郷と
言える場所なのである。「帰りたくない」うちはもう少し思い出作りをしていたいと思う。

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