ずっと香港にお住まいになられるのですか?
「ずっと香港にお住まいになられるのですか?」
あの街に住んでいると、初めて会う方には必ず聞かれる、まるで挨拶のような質問。
ずっと前なら「それも面白いかもしれませんね。」とクスッと笑っていたけれど、
近年の私は「そんなわけないじゃん。」といったやや冷ややかな答えを(心の中で)返している。
それはきっと残念な香港の将来が待っているから、でもあるけれど、
やっぱり日本自体に魅力を感じ始めたことも大きいのではないかと思う。
あんなに窮屈だと思って、飛び出した国なのに。
きっかけは鎌倉。
久しぶりにぶらっと訪れたときに「こんな街だったら、日本に戻ってもいいかも。」と思った。
嫌味なく残る古来の日本の姿が、長らく国を離れた根無し草の琴線に触れた。
そして、そんな街がまた見つかる。
これから日本に帰ってくるたびに(ていうか、歳をとるたびに!)そういう場所が
どんどん増えていくのだろうか。
私が自由に住む場所を決められるなら、「海に近い街」はマストな条件。
香港が好きな理由も、海がすぐそばにあるからだと思う。
この新しく出会った街には海は無いけれど、それにも負けない大きな湖があるから大丈夫。
街の真ん中には立派なお城。威厳ある佇まいは国宝の名に恥じないものだ。
街全体の雰囲気が落ち着いているのも、このお城のおかげなのかな。
お城の前の武家屋敷群。
さっきのお城も随分と無骨なものだったけれど、ここもやはり武家らしくどっしり落ち着いている。
昔はこの道を毎日慌ただしく武士たちが行き来していたのだろうか、なんて思いを巡らすのも楽しい。
情緒溢れる建物群と市民の生活、観光が程良く調和する街が好きだ。
歴史を大事にして、それと仲良くしながら発展している場所は、
歩いていてとても気持ちが良いし、地に足ついている雰囲気に安心する。
香港のお隣、深センにはあまり行ったことがない。
それはきっと、あの街にはほとんど歴史らしい歴史がなくて、
人情、というか温かみというものがさっぱり感じられないからなのだと思う。
いろいろ散策してみようなんて気持ちにはなかなかならない。
長く海外にいたから、日本のものが逆に恋しくなっちゃった。
歳をとるにつれて見える世界が段々と変わってきた。
理由はよくわからないけれど、日本に戻って来るならこういう街に住んでみたい。
私が将来、本当にこの国に戻ってくることになった時、
きっとその時は意外に周りの人よりよっぽど日本人らしく生活したがるかもしれない。
それまでこの国のいろんな知らない街を歩いておきたい。
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