ミドルマン in 香港
「せっかく海外にいるのだし、外資企業で働いてみよう。」
どこまでも楽観的な私がそう思ったのももう5年以上も前。
ラッキーにラッキーが重なって、何だかんだで今日までやってこれた。
仕事だから楽しいこともあれば、その何倍も苦しいこともあるのだけど
ひとまず「外資で働いてみる」っていう私のちっぽけな冒険心は
再起不能な挫折イベントを生み出すこと無くある程度満たされた気がする。
・・・だったのだが、会社とは常に変わりゆくもの。
近頃、私の身の回りにも少し変化が起こった。
諸々の事情で日本の会社としての色合いが強く出始めてきてしまっているのである。
これは外資に軽くなびいて就職してしまった私にとってはストレスの種。
今回はちょっとそれらの一部を簡単に紹介してみたい。
(日系企業で働くひとにとっては何を今更的なお話だと思うのだけれど)
見た目は似てるけど、明らかに外国人である
香港をちょっとテレビで見たような人だったら知ってると思うけれど
ここに住む人たちは髪も瞳も黒いし、背もあまり高くもないから
あんまり外国人っていう雰囲気を醸し出すような類のものではない。
だから、ついつい日本人たちも「どうせアジア人だし似たようなこと考えてんだろ。」
的な安易な憶測の中で香港オフィスのイメージを作っている人が多いような気がする。
もっとひどい人になるとまったく根拠の無い、上から目線で物事を見ている人だっている。
・・・しかし、これは大変な間違いである。
私の経験から言うに、彼らは間違いなく日本人とは違ったマインドセットを持った異国人。
意外に我慢強いところがあったり、そういうところは「あぁ、アジア人だなぁ。」って
思うこともあるけれど、特に職場では常識が違いを意識させられる時間の方が圧倒的に多い。
例えば、ここではどんなに気をつけても3日に一度は必ず遅刻級の交通渋滞が必ず発生して、
遅刻はする方より怒るほうが悪くて、ちょっと夜食にカップヌードル食べてきますなのに
帰ってくるのは早くて一時間後で、「あ、今日も仕事真面目にやってるじゃん」と
思ってモニターみたら何十人もの友達とLINEで転職話に話を咲かせてたり。
そういうシーンに日常的にお目にかかれるのがこの街である。
「おいおい、それをしっかり管理するのがお前らの役割だろ。」・・・?
えぇ、ごもっとも。しかし、一度ご自分でやってみられれば分かるはず。
ここの人たち、そういう細かな自由を制限されることにものすごい敏感なのである。
彼らはいつも言う。「最終的に言われた仕事ができりゃいいんでしょ。」って。
まぁ、クオリティさえギャランティー出来てれば、まったくその通りではある。
離職率が高いのは私の問題!?
これは何回説明したって分かったようで分からない顔をされる、難しい問題である。
日本でももはや終身雇用の時代も終わろうとしているのだと思うけれど、
この街の離職率の高さには日本のマネジメントたちもさすがに閉口。
そもそも会社へのロイヤリティなんて「何それ?美味しいの?」レベルな人たちばかりだし、
人生の中心にはいつも自分を据えていて、より良いベネフィットを常に追い求めていくのが
この街で逞しく生きていくための常識となっている。
だから、せいぜい一緒にいてくれる数年のうちに最大のパフォーマンスをあげてもらうには
どうすれば良いかというところを考えながら、私は香港人との時間を過ごすのだけど
日本人たちはいまいちそこまで割り切った考え方には至っていないようだから、
誰が辞めただの、彼が会社にこなくなっただのレポートした時の返事はいつも低調である。
しかし、さすがにこの状態が続くと「もしや、HKLFに人的問題があるのでは。」という
非ぬ疑いも日本の会議室内で生まれてくるのも時間の問題というもの。
だから、最近の私のリクルート方針は「他の会社に引っ張っられないような人」である。
一昔前なら、業務の効率も考えて、頭が切れる人をまず一番に選んでいたけれど
そういう人たちは当たり前に引く手あまただから、すぐにどこかに消えるのである。
資格や学歴なんてなくていいから。LINEやっててもいいから。
毎日ちゃんとオフィスにやってきて、私とお喋りしてくれればそれで御の字なのだ。
そして、日本人マネジメントの方々は口はいいから金を・・・。
出張してる時だけ人格違うのでは
大方の海外支社にいる日本人スタッフっていうのは本国とローカルとの板挟みに
なってる時間が多いのではないかと思う。(ていうか、それが仕事か。)
だから、上に挙げたような文化やマインドセットの違いの中でもがき苦しみながら
それでも本国の意向を上手に落としこむべく、時には優しく、そして時には自分が
悪者になりながらも会社のために身を粉にして働いていると想像する。
私も「そんなの、どう逆立ちしたって納得してくれるわけないでしょ?」とか
ひどいものになると「あらあら、香港人を同じスタッフだと思ってんのかしら?」
的なメールによく遭遇するのだけれど、それでも一応オトナのつもりだから
各所に波風がたたないようにオブラートに何重にも包んで連絡するようにしている。
そんな私の苦労もつゆ知らず。
いざ出張となったら、彼らは目を疑うほどの笑顔と一緒にやってきては
オフィスでもやたら愛想と良い人オーラを振りまいているから、まったく世話がない。
そのくせ、出張後にはあれがダメだった、誰がダメだっただの出張報告?である。
もう私の方としても「ハシゴを外された感」がハンパないわけなのだけど
ただまぁ香港人たちもそういうのは敏感だから、心の中では「誰?このオッサン?」
くらいにしか思っていないだろうっていうのがせめてもの救いだったりもする。
と、長々と書いてみたけれど私なんかはこうやって笑い話にできるくらいのものだから
全然マシだと思うのだけど、香港(ていうか諸外国)で働く日本人のことを思うと
ますます尊敬の念を禁じ得ないわけである。
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