進化し続けるサービス
過去にも一度記事にしたことがある、香港の洗濯屋。
どんなに考えたってやっぱり便利で便利で仕方がなくて、引き続き私の生活において大活躍。
香港が誇るこの超便利サービス、個人的に無形文化遺産にでも指定したいくらいの勢いである。
まったく、いつか日本に帰ったときに私はいったいどうなってしまうのであろうか。
(汚れた衣服の山の中に埋もれる自分の姿が目に浮かぶ・・・)
ちなみに、私の生活におけるこの店の役割は単に洗濯をすることだけではない。
店の女衆たちともすっかり顔なじみになっていて(基本的に向こうがけたたましく喋ってるだけで
私は「オゥ、オゥ」と相づち打ってるだけだけど)、毎朝散歩がてらに菠蘿飽を買いに行く
パン屋の女将とともに私をある程度認識してくれている香港人たちという重責をも担っている。
彼らにはきっとそんな自覚はなくて、ただ喋りたいから喋ってるのかもしれないけれど、
異国に住むものとしてはこういう微妙な距離に入ってきてくれる人たちの存在は結構嬉しいものである。
初対面のときはやたら冷たいのに(というか人見知り)ちょっと仲良くなると何かとお節介を
焼こうとしてくれる香港人の気前の良さをちょうどよく感じられる関係なのだ。
そんな彼らの店に出張が終わってしばらくぶりに訪れた時。
「あら、随分と久しぶりじゃない?」
店の中でも一番のお喋りの女主人がやっぱりきちんと私のことを覚えていてくれて、
旅行に行ってたのか、病気でもしてたのかと嬉しそうに質問しながら、
私の溜まりに溜まった衣服の重さを測ってくれた。
そして、久々の香港人トークに私も少し頭がフラフラしてきたころ、彼女は
「あっ、そういえばワンちゃんはどうしてたの?」
「ペットホテルは本当に高いからねぇ。」
「私たちはそういう人のために散歩サービスやってるのよ。次の旅行の時は絶対教えてね。」
と締めくくった。最後の部分は明らかに商談である。
まったく香港人というのは本当に抜け目がない。
オフィスレベルでは日本や中国大陸ほど「関係」を重視する風潮はなくて、ドライなビジネストークを
繰り広げるこの街だけど、街角ではいまだに巧みな話術と人間関係の構築が生死を分けている。
私が長い間頭を痛めてきた問題を一発解決する、そんなサービスを最高のタイミングで。
洗濯屋なのに犬の散歩ビジネスとは?なんて疑問も吹っ飛んでしまうくらいに
痒いところに手が届いてしまう人たちである。私は思わず首を縦に振って店を去った。
しかし、この店の役割はいつしかどんどん増えていっている。
そして、よくよく考えたら洗濯物を見れば家族構成、経済力、生活スタイルまで丸わかりであるから
それはそれで彼女たちには結構なプライバシーを握られてしまっている・・・。
そんないかにも日本人が考えそうなことを考えつつ、洗濯物を取りに行った時に今度は
「ねぇ、次は洗濯が終わったら君の家の前に置いといて良い?」
なんて言葉が飛び出したから私はいよいよ仰天した。
店の側からしたら、洗濯済みのものを置いておくスペースがないわけだし、
私にとっても自宅まで運んできてもらえるのだから、まさにwin-winでいうことなし。
・・・なわけなんだけれど、私の胸の中にはどうしても解せないわだかまりがあった。
「住所なんて教えたことないのに・・・。」
彼女たちが口にするのは紛れもなく精確な私の住所。
でもどこでそんな情報を入手したのだろうか。
私の衣服の中に郵便物でも紛れ込んでいたとでもいうのだろうか。
謎。というか、若干の恐怖である。恐るべし、香港人ネットワーク。
もしかしたら、ある日家に帰ったら、
「あら、遅かったわね。夕飯作っといたから。」
とか、そういうサービスまで勝手に提供されているのかもしれない。
進化し続ける我が家の洗濯屋の未来に期待である。(すでに開き直り)
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