今年の端午節は香港・長洲島へ

ここ数週間、週末が訪れるたびに考えていた。
そろそろあの島に帰らなくては、と。

長洲島
仕事が忙しかったり、体調を崩したり。
そんな嫌な週末を幾度と無く乗り過ごした後の今日の空は異様なまでに碧かった。
香港では星なんて見えないよ。なんて言う人がいるけれど、それは嘘だ。

長洲島
4ヶ月ぶりの長洲島へ。
気のせいかもしれないけれど、この島は来るたびに人が多くなっているのかもしれない。
都心を離れて静かなところへ、なんて気で来てしまったら、フェリーを降りた途端に
面食らってしまうだろうし、下手をするとフェリーに乗る時から行列待ちだ。

長洲島
ちなみに、今日はちょっとしたお祭りがあるから、普段より更に人が多い日だったりもする。

長洲島
端午節の名物、ドラゴンボート。
昨年、私はスタンレー(赤柱)で観戦していたのだけど、あちらの国際色豊かでスマートな雰囲気とは
ひと味違う長洲島のそれはよりローカルな雰囲気の中で行われていた。

長洲島
何かと草食系の印象が強い香港人。しかし、この日ばかりはこんがり焼けた逞しい香港人たちが
会場のあちらこちらに見られるから、とっても頼もしく見える。
出番待ちの選手たちに張り詰める緊張感もなかなかのもの。

そういえば、私はわざわざドラゴンボートを観るために来たわけではなかった。
数カ月おきにやってくる長洲島回帰の風に吹かれて、ただただやってきた。
それが、端午節とたまたま重なっていただけだ。

長洲島
そんなお祭りの日でもやっぱり長洲島は長洲島だったってことを、私は再確認した。
ドラゴンボート会場から10mも離れていない場所。メインストリートの角を少し曲がっただけなのに。

長洲島
東京の人はあんまり分かんないかもしれないけれど、この場末の商店街みたいな雰囲気が心に沁みる。
いったいぜんたい食っていけるだけの売上があるんだか分かんない、
趣味でやってるかと疑ってしまうほどのんびりとした雰囲気の店たち。
そんな日本の地方都市の代名詞的存在である静かな商店街。それが香港にも存在する。
とても自然に。そして、それが私の好きな長洲島。

長洲島
メインストリートと反対側のビーチは街中よりさらにちょっと青い空をバックに夏の到来を叫んでいた。
冬の間は「ビーチ」と呼ぶのも躊躇われるようなヤツのくせに。

長洲島
きっと私にとって長洲島は実家に似ている。
忙しくオフィスで働いているときに、ふと頭をよぎる懐かしい光景。
しばらく経つと何をするでもなく、帰ってゆっくりしたくなるそんな場所。

長洲島
実家の周りには大したものなんか何にもないし、遊ぶものだってないから、
私は割とむすっとして、わざわざ帰ってきてやったぞ、みたいな顔をして帰省するのだけれど、
「ちょっと周りを散歩してみよう。」「あのお店はまだあるのかな。」「あの日の猫は元気かな。」
あるべきものがちゃんとあることを再確認することを誰に頼まれるでもなく進んで始める。
それと似たような作業をこの長洲島で私はやっているような気がする。発見でなく、確認なのだ。

長洲島
そして、もちろん食べる。母の手料理を味わうがごとく、食べる。

長洲島
私は街中にいるときに魚旦なんてあんまり食べないのだけれど、ここに来ると必ずそれに手を伸ばす。
食べ物を片手にぶらぶら食べ歩くのがこの島の歩き方。

長洲島
香港人たちもほら、ね。(人、多すぎ)

長洲島
やがて、この島が変わらずいつでも帰ってこられる場所だと分かると私は街へと戻る。
滞在時間もせいぜい数時間。大したことは何もしないんだけれど、この時間は私にとって必要不可欠。

香港の離島群でもおそらく一番活気があって、賑やかな島、長洲島。
きっとその人気の秘訣は、いくら人がやって来たって、どんなに商売っ気を出したって、
どこか常に生活感、というか良い意味の田舎臭さが漂っているところなんじゃないかと考えている。

そして、私はそんな田舎臭い長洲島が大好きだから、いつまでもそうあって欲しいと思うし、
それを確かめるために私は数カ月後もむすっとした顔をしながらフェリーに乗ってやってくるはず。

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