陸の孤島の温泉街で母の還暦を祝ってみた – 山陰・三朝温泉「万翆楼」

フェイスブックの方にはちょっと弱音を吐いてしまったけれど、
私の休暇は事前に思い描いていた自由きままな大人の余裕の旅から
まったく別のものに変質しようとしている。

予定では福岡でしばらくブラブラした後に、普通の日本人でも
あまり足を踏み入れることがないであろう、山陰に旅の舞台を
移そうと思っていた。特に山口・萩にはとっても魅力的だった。

本州西の果ての小さな街にありながら多くの才人を排出し、
やがてそれが明治維新の大きな原動力となった歴史的な街。
玄人に評判の高い萩焼。冬の日本海。
来年の大河ドラマの舞台となるという意味でもタイムリーだ。

であるのに、私が昨日いた場所はあろうことか、
今回の旅では全く予定になかった土地、東京だった。
前夜に入った緊急ミーティング召集メールに、我が家の犬のように
忠実に反応するという日本人らしさを発揮してしまった結果である。

そして、来週は香港に帰らずそのまま東京での出張となることも
決定してしまったから、本当に「自由きまま」でもないし、
「大人の余裕」なんかどこにも見当たらない休暇になってしまった。
いや、もはや休暇なんて呼ぶべきじゃないよね。

休みだってのに、朝一番で羽田へ・・・


せっかく東京にまで来たのだから、そのまま数日滞在しても
良かったのだが、私は4:30起床。朝イチの便で私は鳥取に飛んだ。

急遽の東京召喚に罪悪感を感じたであろう、私のボスの多少の気遣い
でもあるホテル・ニューオータニ。それをゆっくり堪能すること無く
こちらに戻ってきたのにはそれなりに理由がある。

実はHKLFの母、めでたく還暦である。
普段、誕生日もそれほど取り立てて祝ってやることもないのだが、
今回は人生の節目と言える重要なイベント。

それに、私もいい加減海外暮らしが長くなってきているから、
たまにしか出来ない親孝行をするには絶好のきっかけでもあったのだ。
というか、それが今回の一時帰国の重要な目的のひとつ。

こう書くと私がわざわざ香港から帰ってきて、
とんでもなく大げさなことをやってのけたような前フリだが、
別にそんなことは全くやっていない。

私がやったことと言えば、母親を(父親もね)近くの古びた温泉旅館に
連れて行って、美味しい料理を振る舞った。ただ、それだけ。
だけど、結論から言うと、母は大変満足してくれたのだと思う。

知る人ぞ知る、歴史ある温泉街・三朝


今回、私たちが訪れたのは鳥取県は倉吉市、三朝温泉。
少し鄙びた昔ながらの温泉街。開湯850年というから、
それなりに歴史はあるようだが、なんせ交通が不便なところもあって、
全国的な知名度はイマイチといったところ。

三朝温泉
温泉街に到着すると、それらしい由緒ある建築が視界に入るようになる。

三朝温泉
川沿いに立ち並ぶ昔ながらの旅館群。

三朝温泉
温泉街自体はよくある日本のそれのように適度に鄙びてしまっている。
だけれど、川を挟んで歩く散歩道。それを歩くだけでも私は十分に
癒やされてしまう。さすがに最近振り回されっぱなしだからなぁ。

三朝温泉
紅葉はもう終わりに近いけれど、それでも少しはその匂いがする。
四季それぞれの山の変化も日本ならでは。

三朝温泉
私の帰国を待っていてくれたモミジもいた。

三朝温泉
この山陰独特の暗くどんよりとした寒空の下。
ようやく一息つけたような気がする私の休暇。
最近、香港よりも日本にどんどん引き寄せられつつある私の運命。
この先、どんな展開を見せるんだろう。

三朝温泉
今回予約した旅館はすぐ目の前。
なんとなく「千と千尋の神隠し」ぽい?
私は宮崎アニメの中でこの映画が一番好きなんだけど、同意してくれる人に
今まであんまり出会ったことがない。

三朝温泉
「万翆楼」公式サイト
私が仕事の間に少しずつ行ったリサーチでは、ここの料理の評判が良さ気。

万翠楼
旅館の中も油屋風?

万翠楼
お祝いの席にふさわしいコース。

万翠楼

万翠楼
万翠楼
味も見た目も繊細な料理が次々と出てくれて、私もお腹いっぱいなほどの
量だったと思うけれど、父も母も残らずペロリ。
私にとってはその満足気なふたつの顔が一番のご馳走だよね。

万翠楼
お腹もいっぱいになったところで、いよいよ温泉へ。(母はすでに二度目)
満足、満足。

結局、何でも良かったんだと思う

三朝温泉

ということで、私も普段なかなか出来なかった親孝行を成功裏におさめ、
今回の旅の目的もひとつ達成された。めでたし、めでたしである。

でも、ぶっちゃけ言ったら、何をしてあげるかは別に何でも良かった
思うし、親からしてみれば今までずっと「何かしてあげる」立場から
「してもらう」立場になった事自体が既に大きな感動だったのだと思う。

それに外国に居ることを良いことに、普段あんまり何にもしてあげて
なかったところに突如として、豪華料理をぶつけてみる、
という私の作戦勝ちとも言えるだろう。
(いや、まず毎年祝ってやれよという声も聞こえるけれど)

ともあれ。
私もようやく一息入れられるような時間がもてたのは良かった。
9月の長期出張に始まり、どんどん日本に戻されるような圧力を感じる
今日このごろだけど、その流れに従うのか、はたまた抵抗してみるのか。

私の心はこの山陰の地のハッキリしない、どんよりとした灰色の空と
何だか少し重なるところがあって、まさに今が悩みどころ。
ただ、最後の最後はどこかで楽観的、というかなるようになるだろ的な
思考をする人間なので、自分の決めた環境で楽しんでいくんだろうけど。

そういうところは得な性格なのかもしんないね。

関連記事一覧

  1. この記事へのコメントはありません。