クスクスのつもりだったのに・・・香港市民懐かしの味、車仔麺。

私はクスクスが食べたかったのである。

原因は何なのかまったく見当もつかないが、この右を向いても左を向いても
中華が優勢な香港にあって「クスクスが食べたい病」を発症してはや半年。
昨夜、私はついに重い腰を上げてOpenRiceを珍しく自分で開けて、
それなりのクスクスを提供してくれそうなSOHOの中東料理に目星をつけた。

それなのに。

SOHOに行く前にちょっくら銅鑼湾のIKEAにでも、と思って向かっていた矢先、
香港人からLINEが入ってしまった。

友「今どこ?」
HKLF「銅鑼湾に向かい中。」
友「そうなん?私も今銅鑼湾。一緒にランチする?」
HKLF「いいけど。とりあえず、着いたら連絡するよ。」

で、着いたら「SOHOのランチってまだやってるかな?」という私の問い
にもろくに答えず、香港人が半ば強制的に私を連れてきたのがここ。

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榮記粉麵 Wing Kee Noodle

友「ローカルっぽいやろ?(香港ライフファイルにも載せられるやろ?)」

この友は私が香港ライフファイルを書いていることを知っているし、
きっとクスクスなんかよりも(クスクスもある意味とってもローカルだけど)、
こういう香港地場系の店の方がこのサイトのガラであることを理解している。

車仔麺とは何ぞや

車仔麺
香港B級グルメのひとつと言える代物だが、私のイメージ的には雲呑麺とか
飲茶とかそういう外国人が愛好する香港料理よりも、更にもっと市民との
距離が近くて、彼らの生活に密接に根付いたまさに香港庶民派グルメ

それは車仔という名称からも分かるように、以前は移動式屋台で
街のあちらこちらで販売されていて、簡単にアクセスできたこと、
そして、非常に安価で特に庶民層はお世話になることが多かった、
という背景もある食べ物で、まさに香港市民と生きてきた一品である。

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なんて書くと「ただの庶民グルメじゃん。」と思ってしまいそうだけど、
店の前にはずらりと行列が並ぶ。

理由のひとつはまずこの店で出す料理が本当に美味しいこと。
が、もうひとつの理由は他で美味しい車仔麺が食べられなくなったという
事情があるのも少し関係しているのかもしれない。

以前はどこでも食べられた庶民食、車仔麺。
が、これまた悲しいことに衛生面での問題を憂慮した香港政府は以前に書いた
大牌檔だけでなく、この庶民派グルメについても屋台での販売を禁止。

以来、香港市内でそれを食べることの出来る店はどんどん減少。
さらに昨今の米線ブーム等に押されに押され、美味しい車仔麺を出す店も
数えるほどになってしまったという経緯がある。

だから、自分の幼少期に食べたもの、若かった貧乏時代に自分を支えてくれた
車仔麺の味を懐古する香港市民たちが今こうして集まっているのかもしれない。
事実、私を連れてきた香港人もまだまだ働き始めで給料も低かった頃から
この店にはお世話になり、「すでに20年近い付き合い」と感慨深く話していた。

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メニューはこちら。
基本的には車仔麺(とサイドディッシュの野菜)しかない。
上に乗せる具材は自分で選べる仕組み。そういうのも香港人好みなのかもね。

同伴者のオススメは、鶏翼尖とか蘿蔔(大根)だそうな。
あとは猪紅や猪皮。私はこれどっちも食わず嫌いだけど。

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20分くらい待ってやっと入れた。
典型的な狭くて忙しい香港の食べ物屋といった雰囲気。

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この小窓から車仔麺がいっぱい出てくる。
奥では上半身裸で仕事している人がいたり、いろんな雑貨も無造作に
置かれてるけど、狭い香港だからこういうのは目をつむるしかないよね。
ていうか、それが香港式だから、むしろこの雰囲気を楽しんで!


とかゆっくり写真とってたら、「何食べんの!」の怒声。
ま、これもよくある、よくある・・・。


無事に注文を終わらせて少し待ってるとやって来た。
麺の上に注文した具材をのっけてくれるだけのシンプルな料理。

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麺は好きなタイプの麺を選ぶことができる。
今回、私は米線をチョイス。

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サイドディッシュの野菜は西洋菜(クレソン)。
これまた車仔麺と合って、美味。
菜心が日本人には有名だけど、私は西洋菜とか通菜とかのが好きだな。

ちなみに、お椀にものすごいこぼれた形跡があるけど、
これはテーブルに運ばれて来た時からすでに・・・。
こういう大味なところも香港流だと割り切って気に入ってくれると嬉しい

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ごちそうさま。
サイズもあんまり大きすぎず、女性の方でも全然余裕でいけちゃうサイズ

ちなみに。

この店、今でこそこうして立派な店舗として運営しているけど、
昔は他の店と同じようにまさに屋台形式で販売していたそうな。

で、その場所がすぐそこだから連れてってあげるよ、と同伴者が
連れてってくれたのは今の店のすぐ裏手の小さな路地。
昔はこの一角で細々と車仔麺を売ってたそうな。
当時はテイクアウトのみの販売で、値段も10香港ドル強
そりゃ、庶民の強い味方になってたっていうのも納得できるよね。
(今は30香港ドル程度)

マジで「永遠の文化砂漠」になっちまうぞ

ということで、今回は香港市民懐かしの味、車仔麺「榮記粉麵」。
庶民の味だからビックリするような味はしないけれど、
この店の素朴な車仔麺は普通に美味しいと思う。並ぶ価値もある。

それから。

前回の大牌檔もそうだったけれど、こういう古き良き食文化が
淘汰される運命にあるのは本当に残念だと改めて感じる。

確かに衛生的に良くないのは分からないでもないけれど、
それは同時に市民に根付いた食であるし、私たち外国人を惹きつける
魅力的な食文化でもあるわけで。

例えば、台湾好きな人が必ずその名を挙げる台湾夜市。
いつ行ってもそれがあるからこそ外国人が多く台湾を訪れるのでしょう?

大陸人からは歴史が浅く、文化砂漠とバカにされ続ける香港。
せっかくの食文化やそれがある風景がどんどん失われていくこと、
それにかわって後に大きなショッピングモールや化粧品店、
ドラッグストアが街に溢れる流れはどうにか止まんないの?

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