私の買ってきた榮華餅家の老婆餅が食べられないっていうの?

祖母「さぁさ、皆さん。ちょっとタバコしようかねぇ。
HKLFが香港からお茶を買ってきてくれとるけぇ。」
(鳥取弁でタバコとは休憩のこと)

叔父「俺はコーヒーがええわ。」
従兄弟「暑いけぇ、麦茶。」
姪「あ、私はジュースがええかな。」

・・・。

私がちょっと気に入っている榮華餅家の老婆餅を買ってきても、
みんなその横のポテトチップスだとかハッピーターンみたいな
いつでもどこでも買えるものしか手ださない。

・・・。(冷汗)

そんな事が何回か続いた後、私はお土産なんてどうでもよくなって、
とある日、香港の空港で適当に金沙を買って飛行機に乗った。
この金沙といえば、香港でも社交辞令といわんばかりに事あることに
やたらやりとりされている心のこもらない贈り物の代表格である。
ferrero

「ごめん。時間がなかったから、適当に選んだ。
イタリア製らしくて、全然香港関係ないけど。」

えっ?イタリアから?(喜)

おかしなことに、みんな揃ってバカ食いである。

・・・何か、間違ってんだろ。

危ないところから帰ってきたねぇ

何のことはない。
うちの家族にとってみれば、私が持って帰ってくるような
お茶だったり、中国語に塗れたお菓子だったりというのは、
テレビで見る毒餃子だとか、地溝油から作られた食品と同じ類にしか
映らなかっただけという、単純なお話である。

悲しいことだが、日本では割と普通にあり得る光景であって、
うちの家族を責めることは出来ないのではないだろうか。
特に田舎に行けば行くほどこの傾向は強い

彼らの頭の中の中国と言ったら、川の水が虹色をしていて、
都市部にはそれはもう竹田城趾も真っ青な雲がかかり、
周りの人は常に生卵を所持し、日本人や日本企業を狙っている、
というようなろくでもないイメージでいっぱいだ。

だから、私がたまに帰ると、うちのおばあちゃんなんかは、
まるで孫が戦場から帰った来たかのように、「ご苦労様でしたなぁ・・・。」
と意味深げに慰めてくれるから、私も反応に困るのである。

しかし、そんなことはどうでもいい。
私にとって、一番残念なことと言えば、彼らが中国本土、台湾、尖閣、
そしてひいては私の大好きな香港をも全て同じカテゴリだと認識し、
論じてしまっていることである。

ドアもあるし、臓器も取られないから安心せよ

お祖母ちゃん世代なら、まだいいだろう。
なんせ戦争を肌で感じている人たちである。

しかし、悲しいことに同じ傾向は私と同世代にだって見られる。
(東京の友達ならまだしも、地元の方ね)

私が香港で暮らしているといったって、イメージ的には
中国の一都市でそれ以上でもそれ以下でもないから、どっちかっていうと
やはり「何で中国なんか行っちゃったの・・・」的な変わり者を見る目
(ひどい時には哀れみの目?)で見られることが多い。

間違っても、アメリカやヨーロッパに飛んだ海外組と
同じカテゴリで論じられることはないし、
飲み会の時の食いつきがまったく違うから肩身が狭いこともしばしば。

たまに話を振ってもらえたかと思えば、
「そういえば、トイレに連れ込まれて臓器を・・・」、
「あ、そもそもトイレにドアが・・・」、
マフィアとの繋がりはできたの?」とかそういう話ばかりだから、
日本人同士なのに話がまったくかみ合わなくなる。

彼らの中に本当の香港を知ってるものが何人いようか。

 私が声を大にして言わなくたって

この日本人の香港、台湾当たりに対する認識が
変わることについては、なかなか期待し難いものがあるし、
私がこんなちっぽけなサイトで声を大にしたって、
これっぽっちの効果がないことは私だって分かる。

しかし、何を隠そう私もその一人であったのだが、
初めての香港旅行で空港に降り立った時の疑心暗鬼な表情が、
帰りの飛行機に乗る頃には香港中毒者のもつそれに変わり、
ご多分に漏れず、ちょっと大きくなったお腹まわりとともに
帰って行くという体験を、私はこの目で幾度となく見てきている。

そういう意味では日本人の香港観については、私は極めて楽観的だし、
自分の香港好きという点については自信をもっているところがある。

一カゴの蝦餃、たった五分間の天星小輪、眠らない夜。
それだけあれば、香港のことを何も知らなかった日本からの訪問者を
コアな香港ファンに変えてしまうことが出来る事を私は知っているから。

香港とはそんな中毒性の強い、別の意味で危ない都市なのだ。

あとがき

最後に少し。

私が帰省時に軽く嫌な思いをするのは笑い話にもなるから良いだろう。
だけど、たとえば、香港から日本に旅行しに来ている人、
もっと言うと、日本に住んでる彼らに向かって、ひとくくりに
ネガティブな中国人同じ扱いするのは彼らにとって災難である。
(何を隠そう、私も昔はまったく区別ついてなかったけど)

それに、彼らがどんなところから来ているか知った時に、
日本人の方もちょっと恥ずかしい思いをするかもしれない。

更に言うと、私は中国本土の出身者でも、とても洗練されてて、
心の優しい人だって知ってるから、そこらへんは
あんまり紋切り型に話を進めるべきでは無いとも思ってる。

まぁ、みんな、知ってると思うけど一応。

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