私が香港に来て数年間、ずっと苦しめられたもの

私が香港に来た当時、食べ物、言葉、習慣と困ることには
事欠かなかったのだが、その中でたった一つだけ慣れるのに
本当に長い時間を要したものがある。

それは、香港人の英語名。

見た目は紛れも無く普通のアジア人なのに、

「こんにちは、マイケルです。」

とか名乗られるのである。真面目な顔である。

このとてつもない違和感は実際に目の前で名乗られてみないと、
わからないだろう。
免疫を獲得してない人が聞くと、とにかく驚愕である。

ピーター、クリスティー、ジェフリー、ジョナサン、
もう何でも有りなんだが、どうひっくり返っても、
陳さん、王さんにしか見えない。

誰が名付けるのか、その名前

香港人に聞いてみると、どうもこれは生まれた時に
親からもらった名前ではないらしい。

一番多いのは、

小学校や中学校の時に先生がくれた。

という理由。ほほう、これなら、少し納得がいく。

後は、キリスト教の人も結構いるから、
そこら辺からとってるってケースも多い。

でも、実務上必要なんだよね

ただ、こうした英語名もただ「カッコイイから」つけてるわけではない。
旧宗主国イギリスの影響も当然あるわけだが、
外国人があちこちに闊歩する多国籍社会・香港の実情を考えると、
英語名が無いと困ることが多いのである。

会う人会う人に

「私は劉徳華です」とか、「梁朝偉っていいます。」

とかいきなり言われても、発音できないし、覚えられない。
それに同じ苗字の人が大量にいるのだ。
漢字を日常的に使う日本人ですら名前を覚えるのに苦労するわけだから、
欧米人なんて頭の中を?でいっぱいにしながら愛想笑いするしかない

日本語由来のものは破壊力抜群

そうした香港の歴史的事情、社会的ニーズから生まれた
英語名だが、日本語由来のものは別の話だ。
Sakura、Yukiとかなら全然良いと思うのだが、

Kawaiiとか、Sukiだとか付ける人が普通にいる。

こうなるともう無理である。

そんな名前、学校の先生がつけるわけがない。

Kawaiiさんが本当に可愛いなら、とてもラッキーなお話だ。
名前の由来もまた楽しい会話のネタになる。

だが、残念ながらそうでないケースが圧倒的である。

そうなるともう会ってしまった事自体が悲劇の始まりで、
母国語だけに私の心のダメージは非常に大きいし、
ちゃんと辞書とか調べて名前を選んだのか、
だけが気になってしまって、会話が全く進まなくなる。

誰も知らない

何を知らないかっていうと、実の名を誰も知らないのである。

ようするに生まれた時にもらった名前は、
英語名といういわば通名をつけると同時に
社会的に通用しなくなるのである。

これは日本人の感覚で言うと、非常に奇妙な事実なのだが、
実際、私の友達、同僚でフルネームを言える人なんて、
数えるくらいしかいない。

もちろん、家族はずっと本名で呼び続けるのだが、
これはとっても寂しいことなんではなかろうか、
なんていらない心配までしてしまう。

英語名は悪なのか

香港人の英語名。突っ込みどころ満載なネタなのだが、
結論としては、決して悪ではない

もちろん、名前のチョイスで首を傾げてしまうことも
多いわけではあるが、ビジネスのことを考えると、
あったほうが間違いなく便利である。

お仕事なんて、名前覚えてもらってなんぼである。

英語名、あなたもいかが?

私は残念ながらKenとかLisa、Annaとかそういう
国際的に通用する名前を親にもらった口ではない。

香港人にはなかなか覚えられない名前だろうし、
彼らが間違いながらも頑張って呼んでくれるときには
ちょっと申し訳ないな、と思うことだってある。

そんなときには英語名持ってた方が良かったかな。

と本気で考える。

でも、物事にはタイミングが肝心なのである。

「今日から俺のことはチャールズって呼べよ」
「私は今日からキャサリンよ」

いくらなんでも無しである

なので、やるなら仕事を変えるときだな
と密かに名前の候補を考えて、静かにその時を待っているのだ。

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