香港で働かせていただくということ(番外編) – 女同士の修羅場を見た
最近、会社の人の入れ替わりが激しくて、
顔と名前が一致しない人がたくさんできてしまった。
ひどくなると、エレベーターで一緒になって、
「はろー!」と言われて、挨拶を返しつつも、
「はて?こんな知り合いいたかしら?」と
思ったら、実は同じ会社の人だったということすら多い。
一般的に人の動きの激しさという部分では、
香港は日本と似ても似つかないと思う。
数年単位で転職してステップアップするのが当たり前、
という文化がここでは普通に根付いている。
旧正月は転職フェスティバル絶賛開催中
特に入れ替わりが激しいのが旧正月付近。
というのも香港らしい理由がある。
毎年旧正月になると、多くの会社がダブルペイなるボーナスを
支給するので、それを待ってからみんなが一斉に転職するのである。
(もらうまえに転職しちゃうとボーナスもらえないから)
そんな年に一度の転職フェスティバルは、
香港社会にすっかり根付いてしまっているが、
考えてみれば、雇う側からみれば相当に難儀なものである。
わかっちゃいるけど、下手に出て止めることもできないから。
だけど、最近は雇用者の方も利口になってきて、
ダブルペイを出す時期を他の会社とずらしてみたり、
別の形でインセンティブを出す等、対策に必死のようだ。
ちなみに、うちの場合、旧正月前に辞めても、
日割でダブルペイを前払いしてくれる良心的な会社なのだが、
それを知らずに旧正月ごろまで辛い仕事を続けてた人がいて、
ふとしたきっかけに私がその事実を告げたら、
「快d講啦~!」と泣きそうな顔をして怒鳴られた上に、
一ヶ月後には風のように去っていった。
パソコンが起動しない人
それから、他に私の印象に残っている人の辞め方といえば、
「バカンスから帰ってきたらPCが起動しなかった人」である。
この人の場合、常々、女上司と馬が合わなくて、たびたび部屋の外まで
聞こえるようなファイトを繰り広げていたという背景がある。
そして、そんな女同士の小競り合い?(私から言わせれば大喧嘩だが)が
続いた後、お互い訴える訴えないのいざこざに発展したわけである。
雇われている側の彼女もまったくの譲歩無しの状況だ。
こういう時、香港人ってのは会社を相手取ったって、まったく物怖じしない。
労働法だの、関係機関だのを味方につけて、徹底抗戦の構え。
そんな双方が一歩も譲らない状況が続く中、それに疲れてしまったのか、
彼女は気分転換にしばらく有休をとって、バカンスにでることになる。
で、帰ってきたらPCが起動しなかったのである。
私も修羅場の舞台に引きずり込まれた
そりゃそうだ。
女上司が他のスタッフに命じて、PCを動かなくしてしまったから。
他のスタッフっていうか、何故か私だった。(泣)
まったく別の部署だったのだけど、「何かITが出来そうだから」
といういかにも女性らしい理由で私もこの茶番劇に強制参加である。
しかも、最初は「ちょっと!彼女のパスワードを変えといて。」と言われ、
私は何のことだか分からず、頭の上に?が10個位出た上、絶句したのだが、
女上司も怒りがどうにも収まらなかったらしく、
「いや、ハードディスク抜いといて!」にアップグレード。
(なんかそっちのが視覚的に壊した感がある、と判断したっぽい)
しかし、この女上司も恐ろしいことをする。
バカンスからウキウキで帰ってきたら、PCがぶっ壊されている上、
周りはみんなそれを知っていて、彼女は自分だけ惨めな思いをするのである。
「女を怒らせたらいかんね、これは・・・」と今更なことを呟きつつも、
修羅場の登場人物の一員として、私は黙々と仕事をまっとうしたのだった。
X-Dayはやってきてしまったのである
で、問題のスタッフが帰ってきた当日。
神様のいたずらなのか知らないが、あろうことか私は
朝の出社時に彼女と一緒のエレベーターに乗ってしまったのである。
もちろん、私の心臓は超ドキドキで爆発寸前である。
なんせ彼女はちょっと日焼けした満面の笑みで私と挨拶してるというのに、
彼女のPCは既にすっからかんになっていて、私はそれを知っている。
顔を真赤にして「ひ、日に焼けたね?に、似合うじゃん・・・?」とか、
意味不明で気の利かない会話をしていたような記憶がある。
嘘がそのまま顔に出る私が共犯者という立場で平静を装えるわけがない。
そして、そのまま彼女がPCの前でうろたえるのを見届けることになる。
意外にも彼女は涙を見せなかった。港女はみんなの前では強いのだ。
こんなバカなことあっていいのか?と思ったが
ちなみに、面白いのはこの後、彼女は上司の部屋に呼ばれ、
大金を受け取って、ホクホク顔で出てきたということ。
会社の方も3ヶ月分の給料を前払いしてまで、辞めてもらったようだ。
上司も彼女がいなくなって幸せ、彼女も大金ゲットで幸せ。
みんなハッピーエンド(ていうか痛み分け?)で終わった。
やっぱ金だね、香港でモノを言うのは金なのだ。
こうして、ケースはかなり特殊だが、外資金融張りの即刻解雇、
しかも私が特殊工作員としてそのミッションの一端を担う、
という経験を経て、ここ香港では(ていうか海外ならどこでも)
会社へのロイヤリティとか年功序列とか、
そういうものは無意味なドライなところなんだ、
っていうのを妙な説得力とともに体で覚えたわけである。
それ以来、私も会社では「去るもの追わず、来る者拒まず」。
せっかく名前を覚えても、すぐにやめちゃう人もいるから、
大体一ヶ月位は経ったころから名前も覚えるようにしている。
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