香港ってどんなところ?と聞かれたなら
私はヨーロッパ系の企業に務めているのだけど、
出張者もやはりヨーロッパ(特にパリ)から来る人が多い。
当然、彼らがやって来ようものなら、滞在中のお世話をする、
という余計な仕事が増えてしまうのだが、(好きな人は好きらしい)
正直にいうと私はあまりこの仕事が好きではない。
そもそもうちの場合、パターンってものが大体決まっている。
最初の2、3日は飲茶にぞっこん状態になって、
ローカルたちと嬉々としてランチに繰り出すのだが、
オイリーな料理たちに胃腸をやられてくると、
スタバで調達した軽いものをひとりで貪るようになる。
夜になると元気になる厄介な人たち
そして、夜はお決まりでバーやクラブをご希望だ。
「香港のクラブは品がないわね」を口癖のように叫び回りながらも、
香港中のナイトスポットを満喫しているようである。
おかげで私もいろんなところに連れ回されることになるのだが、
ホテルのバーはもちろん、dragon-iをはじめとするクラブたちも
お決まりのコースとして組み込まれることになる。
当然、それなりの雰囲気のあるところだから、
私も行くこと自体に悪い気はしないのだけど、
心の中にはいつも「この人たちにとっての香港はここなんだろうか」
という何とも言い表せない居心地の悪さのようなものが生じてくる。
いや、実際、そういうところも香港の一部なわけだし、
それを楽しむことはまったくもって悪いことじゃないけど、
私がそんなところに普段から生活の一部として好き好んで行くか、
というとそうではないってこと。
(あ、Aquaだけは酒も飲めないのにプライベートでも行くなぁ)
私はどっちかっていうと、旺角の喧騒の中に連れてったり、
大牌檔とかで青島で酔わせたり、なんなら茶餐廳で香港の洗礼を、
っていうコースの方がしっくり来るような気がする。
なぜなら、それが私の目に映る実物大の香港の姿だから。
香港ローカル道も奥が深い
つい3ヶ月前、私はこの「香港ライフファイル」なる迷走サイトを
立ち上げたが、サイトの訪問者、Twitter、Facebook等で
香港に関する人たちの生活を垣間見ることが多くなり、
以前より多くの香港情報が入ってくるようになってきたと思う。
(私が提供する側なのにね)
弾丸と銘打ってありえない香港ツアーを組んでは
手際よく香港をかいつまんで楽しんで風のように去っていく人、
私なんかよりよっぽど茶餐廳メニューに詳しい人だっているし、
香港映画にメロメロで、香港人が見向きもしないような
意味もない風景や葬式場でテンションを上げている人もいるようだ。
私はこういう香港中毒者群に出会うまで、
自分が香港ローカルに近い生活を送る、割と奇特な日本人だと
思っていたから、上には上がいるもんだなぁと素直に驚かされた。
今じゃ、「僻地に住んでたで賞」くらいしか私の誇るものはないだろう。
香港ライフファイル?なにそれ?な人もたくさん
それから、この香港ライフファイルで書かれるような内容とは
まったく無縁の香港生活を送っている方たちも多数いらっしゃる。
大体、「香港 ブログ」でイメージされるサイトといえば、
どっちかというとこちらの層向けが多くて、うちは異端である。
山の上や都市部での暮らし、グルメや買い物にフォーカスされた
トピックも多く、私ではまったくもって書けない内容ばかりだし、
ここ香港でそんな生活をしている人がいること自体が私にとってとても印象的。
そもそも、同じ香港で生活しているというのに、行動範囲がまったく違うから、
私はこういう方たちと街中でバッタリ出会うことが無い自信がある。
そのくらい生活と価値観が違う人たちもこの街には多数いらっしゃるわけだ。
何だかんだ言ってこれからもカオスな街であってほしい
ここでとっても面白いのはそんな多様な価値観を持つ人たちが、
みんな香港に恋い焦がれ、足繁く通っていたり、そこで生活してたりすること。
日本や他の国だってそうかもしれないが、香港ってのは
たかがひとつの都市で、しかも面積でいえば東京の3分の1だし、
自然や地形的なダイナミクスはごく小さい。
そんな小さな都市がこれだけの多様性を持ち、多くの人たちの心を離さない。
これが香港の懐の深さだと私は思っているし、私たちひとりひとりが
自分だけの香港を見つめて楽しめればそれで良いんだとも考えている。
だから個人的な違和感は感じつつも、うちの出張者の楽しみ方も有りだと思う。
大体、この街自体が多くの人にとってのストップオーバーの地だ。
出会いと別れがものすごいサイクルで回転していて、
人はそれぞれの香港像を抱いてここにやってくるし、
旅立つときの土産話だってまったく違うものが出来上がっている。
… いろんな顔を持つカオス都市、香港だからこそ出来る芸当。
私はそんなカオスっぷりをいつも面白おかしくバカにして書き立てるけど、
本当のところはそういうところが大好きなのだ。
そんな香港には、これからもいろんな人に愛される混沌とした街、であって欲しいと心から思うし、「香港ってどんなところ?」と聞かれたなら、
「話せば長くなるから、まずはお酒でも買いに行く?」と言えるような
場所であり続けて欲しいと切に願うところである。
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