毎日通ってるのに、ちょっと苦手な街

私のオフィスは尖沙咀なので、毎日MTRに乗っては、
はるばるこの九龍の中心地まで通ってるわけなんだが、
正直どうにもこうにも私はここが好きになれない

きっと主観に満ちたものになると思うし、
私には湯水のように湧いてくるMoneyというものがない、
から皆様とは状況が違うかもしれないが、
今回はその尖沙咀についてのあれこれ。

初めての出会いは楽しかったけれど


かなり前になるが、私が香港で最初に滞在したのも
ここ尖沙咀だったはず。予備知識もなかったし、
そもそも香港旅行にほとんど期待していなかったから、
旅行会社のパッケージ御用達の尖沙咀のホテル

日本人向けに商売やってるようなこれまた定番の糖朝も
移転前でホテルのすぐ近くにあったから、よく通ってたなぁ。
今でも美味いとは思うが、何もあんなにがっついて食べるほどの
レストランでもなかったかもしれない。

あまりにベタすぎるコースだったとは思うけど、
初めての香港に割と舞い上がっていた私にとっては、
それは単に胃袋を満たす以上のものだったんだと思う。

九龍公園で夜にフラフラしていたときには、
ものすごい馴れ馴れしいアジア系の人に話しかけられて、
カジノに一緒に行こう、としきりに誘われたりもした。
ナイーブな私はよほど美味しそうな鴨に見えたことだろう

今だったら視線もくれずにバッチリ無視してやるのに、
(そもそも声すらかけてもらえなくなったけどね)
あの頃の私ったら、30分はゆうにつきあってやっていた。
貴重な旅行中の時間だというのに、何してたんだろう、ほんとうに。

実際住んでみると・・・ね?


いろいろあったけれど、キラキラした尖沙咀を歩きながら、
なんだか香港を感じてるような気がしていて、
当時はそれなりに幸せそうな顔して歩いていたんだと思う。

ところが、今こうやって実際住むようになって、
しかも毎日通うようになってしまうとどうしたことか、
また違う見方をしてしまう点もいろいろ出てくるのだ。

私が尖沙咀に慣れて、見たくないものまで見えてきたのか、
それとも街が変わってしまったのか。
多分どっちでもあるんだと思うのだけれど。

例えば、オフィスの観点から見てみると、
尖沙咀というのは九龍サイドで言えば、一番の繁華街だが、
そこから海を挟んだ中環とはかなり違った顔を見せる。

香港島の方が金融系のいかにもビジネスマンという体の人たちが
パリっとしたスーツに身を包み、颯爽と歩いているのに対し、
尖沙咀はどことなくラフな雰囲気なところが多いかもしれない。
たまにこっちでもキチッとした人を見たりするけど、
大抵保険や不動産のエージェントのような気もする。

何だかよくわかんないが、香港島で働いている、
といったほうがイメージが断然良い感があって、
逆立ちしたってひっくり返らない香港島コンプレックスなるもの
多少なりともあるような錯覚に陥ってしまうのだ。

なんせショッピングの街だからね


でもまぁ、それも仕方ないのかもしれない。
そもそも街の目的が違うわけである。
あちらはまさにビジネスの中心地たるために作られた街で、
尖沙咀はどちらかというと観光地としての存在意義の方が今日では強い

そういう意味では確かに賑やかなお店も随分と多いわけだけど、
ただこれ、そこに住む人にとって必要な店かというと
多分ほとんどの香港人が首を縦に振ることはないと思う。

観光地にそんな地元密着型の店を求めること自体が
かなりナンセンスなんだけど、それでもやっぱり
香港市民のニーズとはかけ離れた方向に走っている街である。

そもそも、私の周りの香港人の中には、
ハーバーシティとかで待ち合わせしたって、
ろくに巡り合えない人たちが結構いる。
可哀そうに、彼らときたら慣れない場所にくるもんだから、
迷子になっちゃうのである。

買い物する側からしたら、随分と便利だし、
旅行者にとってはランドマーク的な建物であっても、
結局地元民にとっては無縁な場所だったりもする。
だから外国人の私の方が詳しい場所も出てくるわけだ。

誰のための街なんだか分かんない


極めつけは近年街にあふれる宝石屋やドラッグストアたち。
尖沙咀は本土客が一番集まるショッピングスポットだから、
商売する側から考えれば当たり前の現象とは言えるんだけど、
香港に住んでる人からしたら、あまり気持ちのよくない風景である。

少なくともここが自分たちの街だ、なんて思えないだろう。
そういう意味ではいまや、尖沙咀の主は香港人ではなくなりつつある

香港という街の捉え方はひとそれぞれで、
単純に買い物の街だって思っている人もいると思うし、
そういう人には全く持って関係ないこと。

だけど、私は香港の近代的な街並みの中にも古い建築物や乗り物が
うまく共存しているところや、人情溢れる下町の風情も好きだから、
特に最近の尖沙咀の迎合主義的な変遷にはかなり違和感を感じてしまう
私の求める香港像がこの街から消えていってるように思うのだ。

せっかくの香港旅行だから


最近初めて香港に遊びに来たって人は尖沙咀を見てどう感じているんだろうか。

もちろん、星光大道から見る香港島の夜景や、
人でごった返すネイザンロード、セールシーズンのハーバーシティ、
旅行中に必ず一度は来なきゃいけないところだと今でも思う。

でも、せっかくお金を出して香港に来るのであれば、
尖沙咀だけにとどまらずに、もう少し香港らしさの感じられる場所
歩きまわってほしい、というところはもっと声を大にしていいたい。

確かに今日の尖沙咀もひとつの香港の姿ではあるけれど、
他にも古き好き香港を感じられる素敵な場所はまだまだ
隠されているから、それらを見つけにいくこともきっと楽しいと思う。

あの尖沙咀の本土客向けの店の賑わいがあるからこそ、
香港は潤っているという現実もあるわけで、そういう経済効果を
一切無視した一人のフリーライダーの勝手な意見なんだけれども。

他の街もみんな尖沙咀みたいになっちゃったら寂しいじゃない?

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