香港で働かせていただくということ(後編)

しばらく空いてしまったが、今日は前回の

香港で働かせていただくということ(前編)

の続き。

6. 極度の風水信仰者

これは結構レアなケースなのかもしれないが、
うちの会社には、風水を盲信するスタッフが在籍している。
何を信じようがまったくもって知ったこっちゃないのだが、
過度の傾倒は仕事にも支障が出てくるというものである。

どうも彼女はある風水マスターを畏敬しているようなのだが、
会社での自分の席の方角が悪い、何色の服をきていないと
いけない、だとかとんでもルールを我々にも押し付けてくるわけだ。

彼女にとっては風水マスター>上司の位置づけだから、
さぞかし上司の方も苦労していることだろう。
傍から見ている限りでは良好な関係が築けていたことは一度もない。

チームの違う私たちも不運なことに仕事の絡みがあるが、
やはりまったくといっていいほど話が噛み合わない。
きっとそれも彼女が風水理論をもとにものごとを考えているから。

そうじゃなければ、キチガイ以外の何物でもないと真剣に思う

何か悪いことが起こる度に、奇妙な風水オブジェが次々と
彼女の座席の周りに置かれるため、オフィスでも異色を放っているが、
当の本人は大真面目であるから、怖くて誰も口出しできない。

7. 速さこそ至高

広東語から垣間見える香港社会の一端を紐解くでも書いたが、
とにかく香港人は仕事が速い。
明らかに「仕事が遅いヤツは出来ないヤツ」という空気がある。

日本ならしっかりプランを練って、念を入れながら進めていくものも、
香港人にやらせるとものすごいスピードで仕上げてくる。
私が香港で働き始めたときにはこれに随分驚かされたものである。

しかし、落ち着いてよくみると、意外に無駄な動きをしているだけで、
何もできていなかったりする人もいるし、キーワード叩く音が
異常に大きいがために仕事している風に見える人(実は友達とLINE中)
も結構いたりして、雰囲気勝ちしている連中も多いのに気付く。

ただ、多くの人がもっているであろう、中国人の仕事っぷり、
「早かろう、悪かろう」のイメージよりは、
私個人的にはクオリティ面では満足できるレベルにあると思っている。

細かいことに気が付く人、ちゃんとプランをたてられる人、
そういう人もいるわけであるから、いわゆる本土の一般的な中国人よりは
よっぽど頼りになる存在だろう。

8. 飲みニケーションは少なめ

日本、韓国、中国。飲みニケーションが大変重要である。
契約をとるなら、まずは乾杯してから。
会社でのコミュニケーションも酒の付き合いも仕事の一部。

その点、香港はまったく違う。
ビジネスライクなところが多分にあり、プロフェッショナルで、
仕事面での利益や効果が最重要視される。

そういう意味では日本で「飲むこと」でコミュニケーションを
作ってきた、という人は多少苦戦するかもしれない。
クールでドライに自分を持つ香港人たちの懐に入っていくのも
容易いことではないのである。

だが、彼らと一緒に仕事をうまくやっていきたいと思うのなら、
多少なりとも距離を縮めていくような努力をしたいものだ。
でないと、強力なネットワークを持つ香港人の中で孤立してしまう。

たとえば、日本出張の際にキティちゃんや日本製のAVを
買ってきてあげる等、彼ら風にアレンジした香港人用懐柔策
真剣に検討することをこの機に提案してみたい。

9. 恐るべし八卦ネットワーク

どこの国にいったってそうだが、香港人ほどゴシップ好きも珍しい
会社で起こったこと、プライベートな話題、コンフィデンシャルな
トピックまで、会社ではあっという間に広まってしまう。

毎日のランチタイム、LINE等のグループチャット、井戸端会議。
数多のチャンネルを駆使したネットワークはまさに脅威。
そもそも、会社や上司に対して、日本人のように盲目的に
リスペクトする人たちではないから、本当に容赦がない。

私のオフィスのビルも、日本の会社が多いところなのだが、
「さよなら、また明日ー」と上司と別れた直後に
恐ろしい内容の会話を広東語で繰り広げる香港人には
日常的に遭遇する。内容も何でそんなことまで知ってるの?
というような、日本人上司にとっては悪夢のような内容だ。

会社には秘密というものは存在しないし、
日々の情報交換を通して、誰が権力者かを常に確認し、
社内政治をしたたかに勝ち抜いていく、これが彼らの王道である。

10. 最後の切り札はいつも彼らの手に

契約がすべてである。
それに書いてあるものに関してはしっかりこなすが、
逆に書かれてないものについては頼まれたってやらない。

会社にも一生お世話になろうなんて毛頭考えていないから、
嫌なことがあればすぐにサヨナラ。何の未練も存在しない。
会社が彼らを評価するようにまた彼らも会社を同等に見ている

ある意味、日本や韓国のように圧倒的会社優位なシステムの国が
むしろ例外なのであるが、それにしても最初はショックを受ける。

昨日から働き始めたと思ったら、今朝には辞表提出。(しかもLINEね)
なんだか最近病欠が多いなと思ってたら、
他の会社に面接いってたりとかは本当に日常茶飯事。
午前病欠なのに昼からスーツで来るから、堂々としたもんである

最初のころはそれでいちいち私も浮き沈みしていたもんだが、
もうそれが普通なのである、海外なんて。
常にJob Hoppingし続けて、よりよい待遇、更なるスキルを勝ち取る。
そうやって戦い続けていくのがここのやり方。

長くいて欲しいスタッフがいるなら、お互いWin-Winになる
コンペティティブな条件、環境を提示すること。
それはお金だったり、スキルだったり、尊敬できる上司だったりするが、
ひとえに会社へのロイヤリティなんかに頼ってたりすると、
まさに青天の霹靂とばかりにある日突然、辞表はやってくるのである。

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