お金の話しかしない香港人を最大限前向きに解釈してみたいと思う
金、金、金。お金が好きで仕方がないのである。
国際金融都市のお膝元というお金の動きに敏感な土地柄も
あるのかもしれないが、とにかくこの人達は金の話が大好きだ。
そりゃお金が大事なのは百も承知だし、
私もそのために毎日嫌な仕事してるのだけど、
日本からやってきた私にしてみると、
こうもダイレクトにお金の話ばかりされると、
さすがに辟易するしかないのだ。
値段を聞かずにいられない
何かが視界に入るたびに「それ、いくら?」なのである。
「昨日、iPhone買ったんだ。」「いいね。いくらだったの?」
「○○さん、沙田に家買ったらしいよ。」「えー!いくら?」
もっと他に聞くこともあるだろう。
とにかくお金がいくらかかったのか、が興味の全てなのだ。
それも分からんでもないが、値段を聞くっていうのは、
ある意味プライバシーな部分もあるから、遠慮するもんである。
それが、この人達にはない。
ある時、日本からのお土産を買って帰って、渡した時に、
「おー、これいくらだった?」が出た時には、さすがに絶句した。
顔色で株相場がひと目で分かる
日本では株をやる、というとちょっと小金持ちのおじさん、
というイメージがあるが、香港では猫も杓子も株である。
うちの会社でも、多くの人が株を副職として豪語しているが、
これはもう見ているだけで楽しい。
なんせ彼らの顔色 = その日の相場なのだ。
株が上がっている時は機嫌も良いし、
頼んだことももちろんしっかりやってくれるのだが、
一度暴落を始めると、もはや仕事どころではない。
画面からしばらく離れなくなるし、血の気が引いた顔で
一日過ごしているから始末が悪い。
お昼休みも情報収集
ランチに行ったってもちろん会話の中心はお金ネタである。
誰の給料がいくらだとか、今回の昇給でいくら上がった、とか、
そういう極度にプライベートな情報についても、
会社内でシェアされてしまっているのは、
このランチという名の談合会議が毎日開催されているからである。
こんなところで社長をやる人は本当に大変だな、と思う。
なにしろ、ちょっと不公平な査定をするだけで、
会議室に連行されてしまうし、向こうは裏側を全部知ってるのだから。
本当に必要なのか?
香港人の数少ない弱点をあげるとすれば、
「Buy ○ Get × Free」に弱い。
ことなのではなかろうか。
要するに、2個買うともう一つおまけ。とか、
1個だと5ドルだけど、2個だと9ドル。
というごく単純なディスカウントだ。
このレベルの情報になると、いよいよ情報交換が盛んだが、
そんなもん必要ないだろっていうものでも、
「Free」という魔法の言葉の前では理性的になることが
出来ないらしく、どうにも無力らしい。
こないだ大手のスーパーで、
「1個で9ドルのところ、2個で19ドル」
みたいな売り込みがあって、大騒ぎになってたが、
まったく、売る方も売るほうだが、騙される方も騙される方である。
それも一種のコミュニケーション
そういうわけで、お金に関することには目がないし、
まるで挨拶をするかのように自然のお金の話をしてくる。
でも、結局みんなお金が趣味なわけだから、
その共通な話題で人と繋がった気になれるなら、特に害もなかろう。
また、そういったネットワークから実生活に役立つ
価格データベースが生まれるわけだから、
ある意味助け合いの精神に基づいているのかもしれない。
賢く生きていくための術として、そういうコミュニケーションを
しているのだし、そういう国民性が今日の香港の繁栄をもたらした、
と思っても、あながち間違いではなさそうだ。
店が潰れる頻度が半端ない
香港に来た人なら分かるだろうが、
「前はここにあのお店があったのに・・・?」
という経験をすることは多いだろう。
本当に毎日のように多くの店が消えていく。
ここ、香港で成功することを夢見て多くの人が旗揚げするが、
香港人達の厳しい眼にかなわない店は即刻撤退を余儀なくされる。
それもこれも全て、香港人の熱しやすく冷めやすい気質と、
この日々蓄積される価格データベースによる、
残酷なプライスジャッジの産物なのかもしれない。
こうした庶民レベルでの市場原理と弱肉強食のルールの中で、
香港は今日の地位を築き上げたわけである。
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