[番外編]東チベット一人旅 Vol.4 – ラルンガルゴンパ(五明佛学院)

東チベット

今回の記事は私の実弟が書いたもの。
彼のことは以前の記事でも書いたけど、そんな彼が年末、中国はチベットを訪れた。
文章も上手だと思うし、何よりいつもながらに面白そうな旅行先なので
彼のFacebookのタイムラインに眠らせておくのはもったいない。

ということで、ここにもポストしてみる。
ご興味がある方がいればぜひ読んでみて欲しい。
同じ中国でも香港とチベットで見える景色が全然違うから面白いのだ。

バックナンバーはこちら:
[番外編]東チベット一人旅 Vol.1 – 1日目(12月27日)
[番外編]東チベット一人旅 Vol.2 – 標高3,000mを超える世界
[番外編]東チベット一人旅 Vol.3 – 色達

—————

バスの窓は内外の温度差から結露し、分厚い氷でコーティングがされてしまっている。
雪の白さが乱反射し、外の風景はモザイクがかって皆目伺いしれない。
唯一の外界との窓口であるフロントガラスも車内が鮨詰め状態とあっては、
風景を堪能しているような余裕はありそうもない。

バスは未舗装の道路を走り始めた。
フロントガラスからは、大きなチョルテン(チベットの祠)の足元が見え始めるようになる。
そして、周りにも徐々にえんじ色の建物が見えるようになってきた。
吐息や体温でどうにか氷のコーティングの一部を溶かし、小さな窓をつくる。

その小さな窓から見える世界はたしかに異質なものだったが、
日本で想像していたものには遠く及ばす内心焦った。
奥行き方向にあまり家々が展開しているようには見えなかった。

このような風景であればわざわざここに来るまでもないのでは。
疑念が募り始めた。

兎に角視界に何か一つでもその疑念を拭い去ることの出来るような
風景を得ようと必死に窓を覗きつづけた。
道路は蛇行して走っており、カーブを曲がりきる度に
えんじ色をした家々の数は増えていっていたが、
やはり圧巻の光景というのには物足りないものだった。
小さな窓を少し大きくしようとガラスに息を吹きかけ続けた。

何度目だろうかカーブに差し掛かった。
車体が大きく向きを変えることで窓から見える風景は大きく様相を変えた。
曲がり終えたその時、向かいの山の壁面に突如として異空間が出現した。

山にへばり付いたえんじ色の小さな四角い箱、そのどれもが微妙に異なりつつも、
色味は統一され、行儀よく並んでいる。
その数はおおよそ数え切れるものではない。
慌てふためいて、フロントガラスに目をやる。
どこまでもこの異空間が続いている。
先ほどまでの疑念は瞬時に払拭され、この異様で圧倒的な風景に目を細めた。

道路はやがて蛇行をやめ直進し始めた。
地形はいつしかすり鉢状となり、えんじ色の家々が周囲をとり囲み、
大パノラマを為す中、ミニバスはすり鉢の底へと向かった。
ミニバスは途中のバスストップで停まった。

ドアが開くと、身を刺す寒気のお陰で自然としかめ面になる。
後部座席からやっとの思いで脱出し、顔を上げた。
ガラス越しに見ていた風景が眼前に迫った。

東チベット
実際に肉眼で捉え、空気を肌で感じるとその臨場感は数倍にも増す。
妙な戦慄すら覚え、意識していた呼吸すら忘れ、身を刺す寒気等感じる暇がない。
それほどの雄大な風景を前にするともはや言葉が出ない。

ふと我に帰ると好奇な眼差しがこちらに注がれているのに気づいた。
ここラルンガルゴンパはラマ僧で無い人間のほうが少数である。
ラルンガルゴンパという言葉はチベット語であり、中国名では五明佛学院と表記される。
その名の通りラマ僧のための講習所として発展した街なのだ。
家々だけでなくラマ僧もまたえんじ色をしている。
その中にあって、黒と青の防寒着に身を包んだ自分は
明らかにこの空間と調和しない存在となってしまっていた。

その好奇な眼差しに対して、どのように振る舞えば良いか一瞬迷ったが、
素直にこの感動を表情に表すほかないだろう。
自然と顔の表情は緩み、浮世離れしたこの世界に陶酔し、
大きなザックに景色に調和しない装いのまま、
足元もおぼつかない状況で歩いていては、余程の変質者に見えたに違いなかった。

東チベット
道は緩やかな登り坂となり、すり鉢の底へと繋がっていた。
歩を進めるうちに家々が密集し始めてきた。
香辛料の香りが漂い始める。

が、それだけではない。
道には便所からあふれ出た汚水が色そのままに路面で凍結し、
生々しい生活臭を放ち、香辛料の香りと混じり合い複雑な臭気を織りなしていた。
通常であれば悪臭でしかないその臭気が、この場においては
神秘的な空間にリアリティを与える演出効果を生み出しているようにさえ錯覚してしまう。
この僻地にあって、人を惹きつける続け信仰を生み、育む宗教とは
何者ぞととりとめもない疑問を抱かざるを得ないのだった。

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