90後カルチャーとは何ぞや

「つまんないなぁ。HKLFさんがお話してくれないから、全然つまんないなぁ。」
「・・・。勝手にしゃべってなよ。とりあえず相づち打っといたげるから。」
「そんなのいらないです。会話の量より質が大事なんです。」

パーティションの向こうから聞こえてくる声が日に日にうるさくなってくる。

「僕はもうここで働けないっていうのに、HKLFさんは寂しくないんですか?」
「HKLFさんを毎日笑わせられる私はレアな存在ですよ。カードゲームでいうと☆5です。」

最後の日が近づくに連れて、私の彼女かっていうくらいに馴れ馴れしくなってきている
この男だが、別に会社や私が解雇したわけでも何でもなく、
むしろ二週間ほど前に自ら退職願を私に叩きつけるなんてことをした側の人間である。

とことん拝金主義な香港人の典型のような子で、他に給料の良い仕事を見つけたと思ったら
あれよあれよという間に面接を通過し、必然的に、そしてあっさりと我が社とは訣別の道を選んだ。
若くしてそういう世渡り上手な芸当をしておきながら、一方で私には
しっぽを立てながら体をすり寄せてくる子猫のように甘えているわけだから香港人は怖い。

しかし、よくよく思い出してみれば、「仕事が早い」「おしゃべり好き」「人懐っこい」「清潔」
と私の心を掴むのに十分な条件を彼は備えていたし、そして何より気難しい私に
ピッタリと着いてこれていたわけだから、我々は一般的に言って相性が良かったのだろう。
故に彼が少々未練を残すのもまた本心なのかもしれない。

そんなことを考えつつ、あんまりにもしつこい彼のお喋りの合間にふと
「だったら、残ってここで仕事やるかい?」って聞いてみたのだけれど
微かな希望を託されたその問いは
「それは無理。給料はあっちのがいいもん。」でやっぱり間髪入れずに一蹴された。

相手は香港人である。
お金の計算だけは幼い頃からバッチリと叩きこまれているから、センチメンタルな事情を
背景に懐柔しようとしたって、そんなものが彼らの心に響いていくことなんてありえない。
交渉するならまず金を用意してから。それを一瞬でも忘れた私が馬鹿なのである。

ちなみに。
この子の次の就職先は民間ではなく、香港政府だという。
しかも、来る普通選挙に向けて準備をしていく部署での仕事というではないか。

新卒という若さも手伝って、何をやってもフニャフニャ。
いまいち自分のポリシーだとか、男らしさを感じられない彼だったけれど
香港だとか、普通選挙だとかいう話になるととたんに聞き分けの悪い
小さな男の子のような顔になって、口を真一文字に結んでしまう。

普段見せる、持ち前の頭の良さと私に対する図々しさに裏打ちされた
合理的で軽妙なトークはスッと身を潜めて、
「香港は私たちの街だから、自分で守るんです。」
ただそれだけ吐き捨てるピンポイントで妙に頑固な彼にとってはまさに
自分の情熱を捧げるものの渦中に飛び込んでいくようなもので、
とても刺激的だと思ったけれど、それはそれで応援してみたいとも思った。

本当に短い間だったけれど、何だか彼は私にとって「90後カルチャーとは何ぞや」
を身をもって教えてくれたような存在だったような気がする。
残す時間も後わずか。
少々癪ではあるけれど、お望み通り、質の高いお喋りで笑って送り出すことにしたい。

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