香港で人とぶつかることに関する考察

この街に暮らしていると、ちょっと信じられないくらい、人とぶつかってしまう。
私も歳をとって、足元がおぼつかなくなってきているのかもしれないが、
それを差し引いたとしたって、人と衝突する頻度は日本と比べ物にならない。

ただ道の隅っこを歩いていただけなのに、あるいは何もせずに邪魔にならないはずだった
場所に立っていただけなのに。それなのに、人に「ぶつかられてしまうこと」。
これは何だか人として情けない気持ちになってしまうし、何より腹立たしいことでもある。

そんな苦い経験をこの街で10年近くしてきた私が、日頃の恨み辛みをモチベーションに
「香港で人とぶつかること」に関しての考察を下記にまとめてみた。
読んだからといって、何の足しになるわけでもないので、その点はあらかじめ断っておく。

日常的に起こる衝突の分類

あんまりにも頻繁に人とぶつかるものだから、それにイライラしてしまうことに
気をとられて私も随分無駄な時間を過ごしてきたものだが、いろんな現場検証をしていくうちに
日常的に起こる衝突事件について、大まかに次の二つに分類できることに気がついた。

まず、一つ目は香港型。加害者がこの街の住民である香港人によって起こるケースである。
当たり前だが、ローカル民によるものであるから、街のどこにいたって
このタイプに遭遇するリスクというものは存在する。
常識的に考えれば、毎日を忙しく過ごすビジネスマンの多い、市街地特有のものだと
推定されるが、この街の人間は生まれながらに「用事がなくても、なんか忙しい気がする」
という強迫観念のもとに育っているから、例え新界にいたとしても油断は禁物。

そして、二つ目が大陸型。こちらは、もはやこの街の新しい顔とも言える
大陸からの旅行客の仕業である。よって、関連する事件が発生するのも
東鐵綫沿線や九龍地区の大型ショッピングモール付近が中心。

尚、どちらのタイプの事件群についても、日本の田舎でヤンキーがやるような
「お前が先に道をゆずらんかい!」的な安い自尊心に纏わるものであったり、
部長と廊下をすれ違う時のちょっとした気遣いのような社会的序列に由来するものではない。

事件を通して主に見られる特徴

我が国では前方から見知らぬ人が歩いてくる場合、一定の距離に入った時点で
お互いにアイコンタクトを交わしつつ、スムーズにすれ違いが行われるような配慮が
自然に発生するものであるが、基本的に香港型にも大陸型にもそういった
行動パターンは認められず、あくまで自分自身の本能に基づいた意思決定がなされている。

両者の間に見られる顕著な違いとしては、衝突にいたるまでに犯人たちが描く軌道である。
まず、香港型はまるで自分の目的に向かってまっすぐ猪突猛進しているかのように
極めて直線的なルートを選択する傾向が強いことが調査で明らかになっている。

まるで動物実験に使われるマウスが脳神経のどこかを意図的に刺激されてしまって
意味も分からずにせわしなく動きまわるように、常に「よく分かんないんだけど忙しい」
状態の香港人であるから、この直線的なルートの選択は理解に苦しくない。
より速く。それこそが至高の目的であり、道中の障害物により発生するリスクは二の次である。

それに対して、大陸型はまったく予測不能な弧を描きながら人とぶつかる。
いったいぜんたい、彼らにぶつかる必要があったのか知る由もないケースが多く、
いきなり歩き出したり、何か思い出したようにUターンを始めたり、
バーバリーの前で急に便意を催したり、まさに不可抗力的な事件が多いのが特徴である。

香港型が、相手とその目的地を直線で結んだ線(幅約2m)の危険区域を離脱すれば
事故の発生率を大きく減少できるのに対し(相手の目的地を割り出す前に大抵ぶつかるが)、
大陸型は次の一歩がどちらに向くかの見当がまったくつかないため、
その道のプロであっても大陸型の餌食となってしまうケースが時折報告される。

衝突事件の予後について – 香港型

私は基本的に穏やかに生きていたい方の人間である。
人とぶつかられたってもう慣れっこだし、いちいち腹を立てたりはしない。
が、そんな私にだって、いろんなストレスからイライラしている時だってあるのだ。
これが意外に危険な時間なのである。

例えば、香港型の事件が発生したとしよう。
まだまだ寝ぼけ眼な私が、MTRの駅の中で香港人ビジネスマンに後ろから
ぶつかられるという状況。当然のごとく、彼はそのまま謝ることもせずに前進を続ける。

普段なら苦笑いだけで済ます私も、あんまりにイライラしているときには
随分と大人気ないことだけれど、ぶつかり返しちゃうことなんてことも昔はあった。
今思えば、とんでもないことをしたもんだが、あんまりに理不尽なことが起こると
人間て言うものはやはり頭に血が上っちゃうものなのだと思う。

結論からいうと、香港型にこの「目には目を」的な報復は絶対NGである。
100%ヤツラが有責だって状況であっても、気がついたらこちらが粗口マシンガンで即死している。
私がどっか血を流しているような状況なら、警察も手を貸してくれそうなものだが
ちょっとぶつかられたぐらいじゃ、そんな具合にはならないから
口から生まれた戦闘民族(口喧嘩専門)である香港人とサシで口論しなければならない。
それは例えば、安倍首相がプーチンに裸で戦いを挑むようなもの。結果は目に見えているのである。

衝突事件の予後について – 大陸型

では、私が大陸型の犯人たちに向かって、同じことをしでかしてしまったとしよう。
香港以上のカオスが渦巻く場所からやって来ている人たちだから、私なんかは
その場でだらしない腹筋を真っ二つにされた挙句に大事な内臓を綺麗さっぱり持ってかれるなんて
笑えない事件が発生しそうな気もするが、実際は意外に拍子抜けな事が起こってしまう。

・・・というか、何も起こらないのである。
「え?どうしたの?」「な、何が起こったんだい?」っていうような顔で振り向かれて終わり。
要するに、随分とビックリしてしまうことだけれど彼らはぶつかったことに気がついていない。
そして、私がぶつかっても怒らないわけだから、ぶつかられることに対しても違和感を持たない。

人と人とは、ぶつかるもの。それが彼らの生きる世界の常識である。
だから、私が手に持っていた友達の誕生日のために買ったケーキが、彼らにぶつかられてしまって
箱の中でひっくり返っちゃおうが、それのささやかな報復として私が彼らのどこで買ってきたのか
よく分かんない趣味の悪い靴を踏んづけようと、彼らは一連の事態についてことごとく
イノセントであり続けるのである。

私の心の中で揺れる感情とは裏腹に、それに微動だに表情を変えない彼らには、
まさに遥か彼方まで広がる中国大陸のごとく、底の知れないスケールを感じさせられる。
・・・よって、大陸型には、腹を立てるだけ無駄である。人と人とは、ぶつかるのである。

個人的な見解

私の個人的な意見を言うことができるとしたら、大陸型についてより好意的である。
この間、とある人とお話していた時にも話題に出たのであるが、
大陸の人たちはいろんなことについて本能的(そしてやっぱりイノセント)なのである。

お腹が減るから、レストランを探す。自慢したいからロレックスを買う。
うんちがしたいから、トイレを探す。探すのが面倒くさくなったら、そこらでやらかす。
何かを思いついたら、そのことしか考えていないし、そもそも「ぶつかる」ことが
彼らの中で事件性をまったく構成していない。

それに比べて、香港人は困る。
ヤツラはおそらく人とぶつかること自体は、「事件」だと認識はしている。
しかしながら、自分が直線距離で目的にたどり着くためにはその中間に存在する
障害物(人類を含む)は全て悪としてみなし、人権を与えようとはしない。

最近の私なんか、「ぶつかられる」→「(とても軽く)ぶつかり返す」
→「にらまれる」→「あ、すみません。(何故か謝る)」という、2対1で負ける
パターンがテンプレ化しているわけである。

ここまで書いておいて何だが、香港型に対する有効な対処法は現在のところ見つかっていない。

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コメント

    • Ymok
    • 2015年 10月 29日

    今日HKLFさんのブログを発見して初めて読ませて頂きました。

    私も香港人男性と結婚してしまったため、図らずも「大嫌いな」香港にかれこれ20年近く住むはめになってしまっています・・・。(途中日本に3年ほど逃げ帰っているし、もう数年でまた絶対脱出してやる!とも思っていますが。)
    そんな私はHKLFさんの全ての考察に同感!・・・というかおそらく在港日本人はみんな少なからず同じように思うでしょうね。
    「香港嫌い」と言いながらも、香港人の行動や気質を指摘すると不機嫌になる「結局香港人な」旦那にHKLFさんのブログを是非読ませたいです。残念ながら日本語ダメなので叶いませんが・・・。

    今回の考察についてはまさに私もいつも指摘してたことです!結局彼らは日本人と違って「他人のことを考えることをしない」んですよね。ひと言で言えば「自己中」。それは彼らの気質・文化であるので決して悪いとは言えないけれど、そうでない日本人にはキツイです。
    ま、私は香港人に負けませんけどね。自分も真っ直ぐ突き進んで自らぶつかりに行くようにしてます(笑)あとスマホ見ながらタラタラ歩いている奴は後ろから小突いています(笑)
    どうでもいいけど、混んでるMTRやエレベーターのドア付近で両足踏ん張っててこでも動かないようにしてる奴らだけは許せない・・・。

    これからもHKLFさんの香港・香港人に関する考察、楽しみにしています。

    • HKLF
      • HKLF
      • 2015年 10月 29日

      Ymokさん、はじめまして。そして、ありがとうございます。
      香港に20年とはすごいですね。大先輩です。
      私は何だかんだ言って、香港のことがどちらかというと好きなひねくれた人間なのですが、
      嫌いな人にとっては、それはもう毎日が辛いかもしれませんね。

      しかし、

      自分も真っ直ぐ突き進んで自らぶつかりに行くようにしてます(笑)あとスマホ見ながらタラタラ歩いている奴は後ろから小突いています(笑)

      のあたりには、私が絶対にたどり着けない境地を見た気がします。

    • puyo
    • 2016年 11月 25日

    はじめまして!
    小さいころから歩くのが早い父に追いつくよう早歩きをしていたからか、渋谷区に住んでいたときも、引っ越して香港にすむようになっても、女性の自分のほうが、周りより歩くのが早いです。
    香港は、私の徒歩スピードからすると、通勤途中の男性も、ゆっくり歩いている人たちが多いです・・・
    だからぶつかるってことは実は、あまりなくて、牛のような勢いでカツカツ歩く私を周囲が避けているのかもしれません。

    後ろがつまって困っているのに、広がってiphoneを見ながら歩く人たちや食事の後、どこへ行くのか迷って、出入り口や道端のど真ん中でたむろっている人たちに、時折、ムカっとくることがあります。

    勘の良い人は、人種問わず、アッとすぐに気づいて、道を空けてくれますね。
    こんな狭い香港の道端で広がってのんびり歩かれたり、立ち話されると歩きにくく、引っ越したころは、いらいらしがちでした。

    追い抜こうとして自分が怪我したり、転ぶのも嫌だから、約束の時間より、
    早く自宅を出て、出来るだけ気持ちをおおらかに持つようにはしています。

    また、数年前から、道歩く人の後ろから、「おらおら、どけどけ」オーラを脳の中で念じながら歩いておりますと、殺気を感じるのか、ハッと振り返り、前にいる人たちが道を空けてくれる機会も増えました。そのときはこちらから、笑顔でお礼を言います。それで、嫌な顔をされたことはありません。

    • HKLF
      • HKLF
      • 2016年 11月 25日

      puyoさん、はじめまして。
      コメントいただきまして、ありがとうございます。

      追い抜こうとして自分が怪我したり、転ぶのも嫌だから、約束の時間より、
      早く自宅を出て、出来るだけ気持ちをおおらかに持つようにはしています。

      というあたりに、puyoさんの大人のゆとりを感じましたが、
      「おらおら、どけどけ」オーラとはこれまたすごいですね。
      私もそういう迫力のあるオーラが出せるようになれれば、
      多少のストレスからも開放されるような気がいたします・・・。

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