[番外編]東チベット一人旅 Vol.7 – 鳥葬のはじまり

鳥葬

今回の記事は私の実弟が書いたもの。
彼のことは以前の記事でも書いたけど、そんな彼が年末、中国はチベットを訪れた。
文章も上手だと思うし、何よりいつもながらに面白そうな旅行先なので
彼のFacebookのタイムラインに眠らせておくのはもったいない。

ということで、ここにもポストしてみる。
ご興味がある方がいればぜひ読んでみて欲しい。
同じ中国でも香港とチベットで見える景色が全然違うから面白いのだ。

バックナンバーはこちら:
[番外編]東チベット一人旅 Vol.1 – 1日目(12月27日)
[番外編]東チベット一人旅 Vol.2 – 標高3,000mを超える世界
[番外編]東チベット一人旅 Vol.3 – 色達
[番外編]東チベット一人旅 Vol.4 – ラルンガルゴンパ(五明佛学院)
[番外編]東チベット一人旅 Vol.5 – そして天葬台へ
[番外編]東チベット一人旅 Vol.6 – 黄金色の祠と天葬台

—————

時刻は午後1時。
車を停めたその側には乗用車とミニバスが数台停まっていた。
見物人が数人先着している。
天葬台は丘陵の中腹を切り開いて整備されていたが、
建設されてまださほど時間が建っていないのであろう、
コンクリートがまだ白く輝いている。

所々に髑髏をあしらったモニュメントがあるのだが、
やはりリアリティに欠けている。
正面が一段高くなっており、先ほど見たチョルテンが中央に鎮座し、
その背後には舞台装置の様な猿山然とした山の模型が配されている。

我々一行はまず、チョルテンの周りを3周回ることにした。
思い思いのペースでチョルテンを回った。
心なしか口数が減ったところを見ると、
いくらテーマパークのような場所と言ってもこれから執り行われる天葬という儀式に対して、
畏敬の念が芽生え始めたというところだろうか。

チョルテンがある場所の少し奥に小さな広場がある。
小さな広場には鉄柵の出入り口がつけられており、
人間の腰くらいの高さの壁がその広場の三方を囲っていた。
唯一囲われていない山頂方向の一方だけが壁が無い状態となっている。
その壁の無い山頂側の一方の隅に屋根が付いた一角が見られた。
この一角で所謂天葬の準備がされる。
山頂方向に開けている理由は勿論、天葬の主役とも言うべき”執行人”を招き入れるためである。

我々見物人一行は見物人席へ回ることにした。
見物人席へ向かう道中にはチベット仏教の死生観を表した彫刻や
亡くなられた方の遺髪が備えられた供養塔の様なものがあった。
嫌でも緊張感が高まってきた。

先ほどの広場を見下ろす場所に見物人席があり、
山の傾斜に合わせて簡易な石段が整備され腰を掛けられるようになっている。
その見物人席と”執行人”のための間には金網が施してある。
見物人席に座ると先ほどの広場は傾斜に沿って右斜め下方向に見える。

時刻は午後1時20分。
駐車場を往来する車が数台現れた。
それら車には数人ずつ男が乗っており、車の停車と同時に車から降り車の後ろへ回り、
布や毛布に包まれた大きな塊を車から降ろした。

この大きな塊は亡骸に他ならない。
急ぎ広場へ運ばれていく。
亡骸は、広場の屋根がある一角に集められるため、
見物人席からでは丁度視野が遮られてしまっており確認しづらくなっているが
亡骸は10体ばかりであろうか、次々と運びこまれていった。

運び手は恐らく遺族なのだろう、そのまま広場に留まる。
遺族関係者だけで広場は40人位を数えた。
やがて搬入が一通り終わったのが午後1時40分。

見物人もいつの間にか50人位だろうか。
我々の様な旅行者が数人、僧が10数人、その他現地の一般人といった内訳だ。
開始時刻である午後2時まではまだ時間がある。

鳥葬
金網越しには早くも”執行人”であるハゲワシの姿があった。
冷徹な眼光、鋭い嘴、筋肉質な胴体、無駄を排し色味を持たない大きな羽、
全身を覆う毛並みは方々へ逆立ちその獰猛な気性を感じさせ、
荒涼の大地の覇者といった風格を漂わせている。

目の前には既に20羽程度の群れがある。
周りを見渡すとハゲワシの群れがいくつか点在しており、
現時点ですでに100羽近くはいるのではないだろうか。
上空にも悠然と数羽が舞っている。

やがて、壁を排し山頂に向かって開かれていた一面がカーテンで仕切られ、
広場の中がシャットアウトされた。
見物人席から確認出来るのは遺族の表情のみといった感じだ。

途端にハゲワシの群れは色めき立った。
ハゲワシはそのカーテンが意味するものを見物人よりも余程理解している。
近くにいたハゲワシは小走りでカーテンとの間合いを徐々に詰めてきた。
遠くに陣取っていたハゲワシは途端に羽ばたき始め、
見物人の真上を飛びカーテン付近に急降下してくる。

ハゲワシは羽を広げればゆうに2mは越す。
その巨体が音もなく空から急降下してくる。
まかり間違って襲われればただでは済むまい。
背筋が凍る思いがした。

いつの間にかカーテン付近には人だかり、否、ワシだかりが出来ていた。
時刻はついに午後2時を回った。
(余談だが、ここラルンガルゴンパの住民は定刻を守る風潮があるように感じた。)
広場に黒と橙色の民族衣装を纏った男が出てきた。
その威厳は閻魔大王を思わせる。
両手には中華包丁を握っている。
その男とほぼ同時に僧が一人、猿山の一角に座した。

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