玄関先の野菜

日本の果物って、本当に甘くて美味しいから大好き。
でも、高すぎるから滅多に買わないんだ。

香港人の本音だと思う。
街角のお店に並ぶそれの何倍もするような値段をつけた、日本からやってくるフルーツたち。
一口食べてみれば抜群に美味なことに疑いの余地はないのだけれど、
同時にお財布にも優しくないことでも有名だから、毎日の食卓にあがることなんてまずありえない。

きっと日本人は毎日こんな美味しいものを食べているんでしょ。羨ましい。
そう続けたいかのような表情を見せる香港人に私は非情な一言を浴びせる。

「フルーツなんてものはね、買わなくたって、ほっときゃ誰かが届けてくれるよ。」

多少言い方に問題はあるけれど、大筋では間違っていない事実でもある。

 

年に数度も帰らない、鳥取の実家の話である。

出かけるときにも玄関に鍵をかけているかも怪しい、例えそうしたとしたって
勝手口からまさに勝手にご近所さんが現れるからあんまり意味なんてなさないだろう、
そんな妙な信頼関係がまかり通っているうちの集落では、

玄関先に誰かが野菜や果物を置いては何事も無かったかのように去っていく。

という不思議な出来事がたびたび起こる。
「私たちが不在にしている間に小人さんがトコトコやってきて、
素敵な贈り物を置いていってくれたのかしら?」と思わず首をかしげずにいられない、
都会暮らしの私にとっては不可思議、かつメルヘンチックなイベントなのだけど、
それを香港に戻って話したときの反応もまた面白い。

例えば香港人は

え?そんなラッキーなことが起こるの?でもさ、誰が置いていってるかなんてわからないから、
ちょっと怖いよね。毒が盛られてたりとかしたら、死んじゃうじゃん。

というごく真っ当で都会人らしい冷めた意見をするし、大陸から来た人からは

自分が置いたっていうことを言わないなんて、自分によっぽど酔ってるのかしら。
そもそも人にわざと認識されないように行う親切なんて自己満足でしかないと思うのだけど。

なんていう、対角線上の価値観から繰り出される意見すら飛んでくる。

事の真相はというと、きっとうちの母親がよく言う「田舎暮らしは助け合うことが大事なの。」に
集約されていて、置いていかれる以上に彼女も置物をしに行っているのだろうし、
その言葉には決してポジティブな意味だけではない何かも含まれているのだろうとも容易に推測される。

でも、少なくとも名前を告げずに物を贈るという行為そのものを見た時、そこにはなんだかんだで
日本人らしい「思いやりの心」、つまり打算的な好意の交換が伴わない親切、が存在している
ということを私は信じてみたいし、それこそが本当に感謝しなければいけない対象だとも考えている。

そういう前提において、時間がないことを言い訳にお金を使って購入されていく都会の高級品よりも、
玄関の前にそっと置かれた田舎の親切の方がより貴重、というのが私の価値観である。
というか、そう思うようになった。歳をとってから。

 

さてさて、私が急にこんな話を持ちだしたのも、それと同じ感覚をここ香港でも久々に味わったから。
今回、私の玄関先に置かれた贈り物。小人さんの正体はMeet at 美孚の人こと小野寺さん

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朝の忙しさに殺伐としたオフィスに届いたそれ。
まさに自分が開けられるタイミングを知り尽くされたかのように佇む一枚のイラストに先手を取られる。
中にはやっぱりお金で買ったと思われるようなものは何一つ入っていなかったのだけれど、
これほど開封をワクワクドキドキしながら楽しむということ。過去に記憶がないものだった。

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まずは名刺代わりにお家芸から。これはもう私が説明する必要がない。

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イラストだけでなく、料理も得意な方だけに手作りのジャムも。
今まで朝は階下のM記まで忙しくテイクアウトしにいってたけど、それもしばらくはトーストにしよう。

ちなみに、これは彼女が参加する memorandom.tokyo というウェブマガジンが最近、渋谷はSPBSにて
「little shop of memorandom」なる、とっても面白そうなお店をやっていた時に出品されたもの。
私も当初は5月に東京出張が入っていて、ぜひそれを訪れたかったのだけれどまさかのドタキャン。
哀れに思った小野寺さんが救いの手を、という背景があって、私の手元に届いている。

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memorandom.tokyoの主催者である、文筆家の長谷部千彩(Web / T / I )さんからも本を頂戴している。
新書でなくて、彼女が読んだままのもの。付箋があちらこちらにつけられたままなのが尚良い。
私が好きな香港の世界を描いてくれる彼女が一体どんなことに心を動かされたのか。興味深い。
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読み物や写真集がたくさん。
小野寺さんは下道基行の個展にまで足を運んでくださったようで、小さな箱の中には
小野寺光子、長谷部千彩、下道基行、という私を最近元気にさせてくれている人たちの
息吹が詰まっていて、開封を終えようとしたところで私はとても幸せでお腹いっぱいな気分になった。

それぞれのアイテムには、ものすごく丁寧な包装がされていて、小野寺さんが思ったことや
感じたことのコメントも添えられていたから、私はいちいちそれに感動していたのだけれど、
やっぱり一番すごいと思ったのは、「私がもらうときっと喜ぶもの」を彼女が知り尽くしていて、
さらに労力を使ってそれを用意してくれたことが分かること。

私の今までの人生を振り返ったってこんな素敵なものを贈った記憶だってないし、
今後の半生を目を細めて眺めてみて、自分がこれだけのものが用意できるのだろうか、
と間違って自問してみたら、随分気が遠くなってクラクラしてしまった。

日本人ならではの思いやりとおもてなし。ここに極まれり。
香港で味わうそれはまた格別で、さっさと有給をとって日本に帰りたくなった。

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