夢が集まり、そして飛び立つ街、香港。

本土からの小富豪たちに蹂躙される夜の広東道。
私は、その一角にある寿司屋「すし廣」でこれまた本土から
やってきている二人の中国人と向き合っていた。

男はまん丸眼鏡をかけた遼寧省は瀋陽からやってきた青年。
隣にすわる可愛らしい色白の女の子は湖南省出身。
どちらも私のチームメンバーとして働いていた過去があり、
その頃からずっと可愛がってきている二人である。

いつもはそこらの四川料理で安く済ませている私たちが、
ちょっと奮発をして寿司を囲んでいたのは、
まん丸眼鏡がついに上海行きを決めたことを受け、
それの送別会という意味合いがそこにはあったからだった。

 広い中国、いろんな人がいるもんである

香港で見かける本土人。
誰もが思い浮かべるのが、我が物顔で香港を闊歩する
横柄で小金持ちな土豪たちだろう。
私だって、過去にこんな記事も書いている。

そんなネガティブな先入観を持った私の前に現れたのがこの二人。

「えっ?なんでそんな原色ドレス?」
「ちょっとそのTシャツのデザインは・・・」
本土人特有の垢抜けなさを明らかに残す人たちではあったが、
ひとたび仕事をすれば、持って生まれたものが違うな
と思わずにいられない頭のキレ具合で衝撃的なパフォーマンスを見せた。

ちなみに、一人っ子政策が育んできた底知れぬ野心は往々にして
コントロールのきかない上昇志向の化け物を産むが、
この二人についてはたまたま私と相性があったからなのか、
非常に仕事のしやすい関係も幸いできていたと思う。

そして、ひとたびプライベートで話せば、
普段とは打って変わってナイーブなところも併せ持つ彼らとの時間を
私は楽しむようにもなっていたのである。

 広東道のあの人たちとは随分違った私生活

そういうわけで、私の前では幸せそうな顔をしていて
ニヤニヤ顔だったまん丸眼鏡だが、彼の香港生活が
万事快適だったかというとそうでもない

もちろん、母国語(中国語)で話せないという事実は
説明するまでもないが、同じ中国人でありながら、
なかなか上手く交流することのできない香港人。

これはもちろん一般的に香港人と本土人とは仲が悪いという説も
あるだろうけど、それ以前に彼らの場合、価値観や
興味の対象が香港人とはちょっと違っているように私には見えた。

それから、香港のクレイジーな家賃
薄給である彼らにとって、一人で住むことは不可能に近いから、
同じく本土からやってきた学生や同僚とシェアルームをして
もともと狭い香港の家をさらに分けあって生活していた。
大学の寮生活をイメージしてみれば良いのではないだろうか。

広東道でどこから湧いたとも知れぬ不思議マネーをまき散らす
本土人の暴れっぷりとは一転、随分とつつましい生活である。

 地元で大人しくしてれば、快適な生活が送れたのに

そういう話を聞いているうちに、何でまた香港なんかに来てしまったのか
とちょっと無神経な質問をしてしまった。

彼らは中国でも有数の大学を卒業し、その後香港中文大学で
マスターを取得した言わばエリートとも呼ばれる層である。
地元に戻れば、それ相応の安定した生活が待っていたことだろう。

事実、私の目の前に座っている二人の両親もバリバリの共産党員であり、
そうした後ろ盾がある限り、職の斡旋など朝飯前である。

学生の時分から目立った成績を残したまん丸眼鏡たちにも
当然ながらに入党の誘いがあったようだし、
色白女の子の方は将来の融通が利くことも考え、
香港に出てくる前に若くして党員になってしまっている

しかしながら、この人たちの厄介なところは、
頭がいいばっかりに、この既得権益に溺れる道を選ばず
自分を試してみるという意味でも、この自由競争社会、
香港に出てきたわけであり、本当は経験しなくても良かった
厳しい現実に自分の意思で直面しているという難儀な人であること。
(まぁ、自業自得と言えば、それまでだけどね)

それに7年間香港に住んでしまえば、優秀なパスポートが
手に入るし、そうなれば行く先々でことごとく拒絶されてしまう、
人民パスポートの呪縛からも逃れることができ、
自由に世界に羽ばたいていけるようになる。

結果として、まん丸眼鏡の花が香港で咲くことはなかった。
アメリカンドリームほどではないが、地元から香港に出てきた時には
それなりの野望も心に秘めていたことだろう。

だが、彼の瞳にはまだまだ鋭い光がどこかに残っていて、
今度はその情熱を新しい中国の希望、上海に向けようとしている。

 多くの夢が行き交うストップオーバーの街、香港

香港という小さな街には毎日のように世界の国々から
まん丸眼鏡がやってくる。そんな人々の胸の扉を開いてみれば、
大なり小なりいろんな理想が詰まっているわけだが、
成功を掴んで舞台のスポットライトを浴びる人がいる影で
夢半ばで去って行く人も当然ながらそれ以上にいるわけである。

私たちが寿司を囲んで懐かしみながら話した思い出話。
それはちっぽけだけども、とても意味のある一つのストーリー
この香港という街は何千、何万というそんな小さなお話を
毎日のように聞いてきたんだと思う。

… そして、そんな香港でも辛い想いをしたまん丸眼鏡の口からは
ついに一言も香港についてネガティブなことは出てこなかった
「香港に来たことに後悔はないし、いろんなことを学んだよ。」

また、機会があれば、帰ってきたいんだってさ。
愛されてるねぇ、香港。

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