たかが傘を直すだけなのに(香港編) – bonbon堂 傘屋尋ねて三千里を読み解く

◇bonbon堂◇ 傘屋尋ねて三千里

いつもお世話になっているbonbon女史が書かれた、ある日の記録。

要は、傘が壊れてしまったから、それを修理しに行っただけ
という何でもないとある昼過ぎの出来事を綴っただけのことだが、
香港在住の日本人が日常的に経験する出来事というか災難について、
簡潔にまとまっている良記事だから、今日はそれを紹介してみたい。

まず、

傘の骨が曲がっちゃって、しばらくそのまま使ってたら
ついに折れたんです。それがもう何ヶ月前の話だったか…。
直さなくちゃな~と思っていたのだけれど、ついついそのままでいたら
雨の季節に入ってしまって不便な思いをすることが重なったので、
やっと重い腰を上げて直しに行くことにしたのです。

とある。

人間が生活するのにあたって、日々問題は必然的に出てきてしまうが、
こういう「傘を直す」というような、やってもやらなくてもさして
差し支えない問題というのはいつまでたっても後回しになってしまうもの。

特に外国で暮らすものにとっては、飯をどこで食う、銀行はどこだ、
とかそういう死活問題がまず優先事項となってくるので、
傘屋なんてものがホットな話題に上がってくるなんて、まずないだろう。

bonbon女史はそういう割とやらなくても死なないようなこと
ついにやろうと決心し、重い腰を上げてみたわけである。

ちなみにそれに続くくだりは彼女のバックグラウンドを見事に語っており、
このあとの話の展開をより面白くしてくれる。

私は尖沙咀に住んでいるのに、そのお店は鰂魚涌なの。
地下鉄で、うちから7つも先!しかも乗り換えあり!
そりゃあ誰の腰だって重くなるってもんですよ。ね?

大変申し訳ないが、一ミリたりとも共感できない
香港とは、多数の富めるものと、これまたその他多数の一般市民で
構成されている格差社会だが、それは日本人社会も同じである。

語弊をおそれず言うと、苦労している人と、苦労していない人がいて、
彼女は明らかに後者であることはまず間違いない、と読み取れる。

郊外のひと駅と言えば、結構な時間だ。
たとえばMTR大学駅から大埔駅なんて7分だから、7駅だったら49分。
そこそこの時間になるが、尖沙咀から鰂魚涌の間なんてひと駅2~3分だろう。

たかが15分程度でジタバタされてしまっては困るのである。
私なんてやろうと思えば、毎日フェリーを乗り継いで通勤だし、
うちの会社には深センから尖沙咀まで通っているヤツだっている。

このエピソードひとつをとっても、彼女の育ちの良さ、
香港での優雅なライフスタイルが容易に想像できるというものだろう。
私のような下界のものとは明らかに違う態度である。
まず、ドイツ語をやっているというあたり、違う匂いがしてしまう。

そんな人がはるか海を越えて、傘を直しに行ってしまったというお話。

どうしてそんな遠くの店に行くのかというと、他に知らないからです。
傘の修理してくれるところってあります?

(中略)

別にここを特別贔屓にしているとかいうわけでもないので、
どこか尖沙咀からもっと近いところに修理屋があるのを
ご存知の方がいらしたら、どうぞ教えてください。

確かに仰るとおりである。
だが、香港という場所はたとえば秋葉原の電気街のように、
同じ業種が同じ場所に集まって商売を営んでいることが多い

だから、今回のように傘屋だのなんだの、そんな難儀なものは、
尖沙咀あたりでは残念ながら見つからない可能性が高いわけである。
さすがのbonbon女史であっても、やはり下町に赴くしかないのだ。

そして、いよいよ本編なわけだが、その日起きた出来事を
見事に綴ってくれているパーフェクトな記録だ。

鰂魚涌に行く

傘屋さん移転してるΣ(゚д゚lll)ガーン

トラムで北角に戻る

行き過ぎちゃったので反対方面に乗って一駅戻る

傘屋がなかなか見つからない ( ゚Д゚)アレー?

見つけたと思ったら留守 (゚д゚lll)ガーン

(電話したら20分で戻ると言われる。)

戻ってくるまでお昼ごはんを食べることにする(もう3時半だけど)

向かった麺屋が閉まってる ( ゚Д゚)…
(昼の営業は三時までなのを忘れていた。)

その辺の麺屋に入る

傘屋に向かう

傘を預ける

5日後に引き取り (゚∀゚)

不幸に不幸が重なったケースで、一日でこれだけ濃い経験ができるなんて、
ネタ的にはある意味美味しい日だったとも言えるが、
香港住民なら痛いほどわかるという不運をほぼフルコースで味わっている。
(bonbon堂の地図も参照されたい)

傘屋さん移転してるΣ(゚д゚lll)ガーン

これには本当に泣かされる。

いまや家賃高騰による店舗の移転、クローズは日常茶飯事
あらかじめ連絡して欲しいもんだが、下町の傘屋がウェブサイトだの
SNSだのやっているわけないから、無理をいうなってもんだ。

それに、事前に電話で確認しようにも、下町の職人がそんな流暢な英語を
しゃべるわけもないから、こちらが一生懸命説明しているのに
一方的に中国語の住所を伝えられてガチャ、が関の山である。

しかし、ここでbonbon女史は、トラムに何気なく乗ってみた上に、
ひと駅乗り越してしまう、というやはり彼女らしい足取りを見せながらも、
奇跡的に傘屋の移転先へと辿り着いてしまう

彼女が生活能力のない、ただの「苦労してない層」ではないかもという、
意外な一面を見せる最初のシーンである。

見つけたと思ったら留守 (゚д゚lll)ガーン

ある。これもある。

せっかく店にたどり着いたと思っても、店は閉まっていて、誰もいない。
たとえば、昼休みを使ってわざわざ店をたどり着いても、店の前には

「ランチのため外出中」

いや、こっちはランチを削ってまで来たのに、あんたがランチか
みたいなね。

下町の連中は本当に信じられないタイミングで店を閉める。
飯を食いに行くのに閉める、トイレにいくのに閉める、
一日何回閉めてるのかわかんないくらいの気まぐれ野郎たちである。

そして、そんな日本だったらガックリを通り越して、
クレームにまで発展しそうな場面で、またまたbonbon女史が
驚愕の思考回路を繰り出してくる。

もう今日はこういう一日なのだなと確信しました。
悟っちゃった。仏陀に近づいたかも。

だから、そのあと遅いお昼にしようと目当てのお店に向かったときも、
「営業していない可能性濃厚」という覚悟があったので、
果たしてそのお店が昼の営業を終えていたのを目の当たりにしたときも、
やっぱな~という思いが強く、悲しくもなんともありませんでした。

もういいの。分かってた。知ってたよ。
というわけで、すぐに別のお店に入りました。
そこも美味しかったから、没問題。

あっぱれの精神である。

この開き直りと仏の心がなければ、ここではやっていけない。
こんな異国の地で、しかも下町の傘屋の前で日本での常識を叫んだって、
鼻くそほじりながら、笑われるだけのこと。所詮、我々はよそ者である。

突然の傘屋移転→探しだしたのに閉まってた→飯で時間を潰そうとするも
飯屋まで閉まっている、という最悪の三重苦に遭遇したのにも関わらず、
そんな心のストレスを「牛肉河」一皿でポジティブに転換しまうメンタリティ

これこそが香港を逞しく生き抜いていく秘訣なのだと思う。

ちなみに、当たり前だがこのよく訓練されたストレス変換プロセスは、
そこらの日本人勢が容易にやってのけるような代物ではないはずである。
だが、よくよくbonbon女史の歴史を紐解いてみれば、そこには秘密があった。

過去、深センで揉まれた数年間」… が燦々と光を放っている。

あぁ、納得。
深センのようなカオスシティに比べれば、香港なんて可愛いものだったのだ。
私のほうがよっぽど苦労していない層なのである。

さてさて、こうしてお隣の深センで育んだ抜群のEQの高さ
今回の傘屋の一件を乗り切ったbonbon女史だが、
彼女でさえ、たかが「傘を直す」だけでこれだけ振り回されたわけだ。

半日拘束された上に、香港島東部をたらい回しにされてしまっている。
海外で暮らすというのが如何に大変なことかがよく分かるだろう。

ちなみに、「5日後に引き取り」とあるが、これまた一筋縄にいくかどうか。
こういう経験をして、香港の日本人は強く、図太くなっていくのである。
時にはあんまりにも強くなりすぎて、日本人らしさが無くなる人もいるが…

当のbonbon女史はといえば、Twitterでやっと開幕した相撲実況に夢中である。
いとおかし、在港邦人たちかな、である。

facebook
Facebookでは、香港ライフファイルのこぼれ話も?

 

にほんブログ村 旅行ブログ 香港旅行へにほんブログ村 海外生活ブログ 香港情報へ

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

関連記事

コメント

    • bonbon
    • 2014年 5月 11日

    や〜、実はこのお店はちゃんとwebサイトもあるし、facebookまでやってて、引越ししていたのを知らなかったのは、本当に私の準備不足が悪いんです。笑
    サイトで新しい住所を確認したり、地図でそれがどこなのかを見たり、スマホが役に立ちました。あははー。(゚∀゚)
    受け取りの日は、先に電話してから行きます!

    • HKLF

      bonbonさま、

      あら、そんなきちんとしたお店だったんですねぇ。
      ごていねいにFacebookまでやってくれてるなんて、
      職人さんたちも随分と頑張っていますね。

      私も広東語が少し話せますが、いまだに
      こういうお店に電話するっていうのは正直気がひけます。
      ものすごい速さで、ローカルな広東語をしゃべってくるので、
      コミュニケーションできるかちょっと不安なのです、笑

  1. この記事へのトラックバックはありません。

2018年12月
« 3月    
 1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
3031  

HKLF’s Twitter

PVアクセスランキング にほんブログ村
ページ上部へ戻る